耽美試行

はなこよみ(7)

 43〜47 2014.11.13〜2014.12.14

    

-43-

大島由紀夫のスマホへ、奥野菜穂子から、明日にでも会えませんか、とのメールが来ました。明日といえば金曜日、土日の前だからかなり自由のきく時間がとれます。四条小橋をあがったところにある瀟洒な喫茶店で、午後6時に待ち合わせた大島由紀夫は、約束どうりの時刻にその喫茶店へはいりました。まだ菜穂子が来ていないらしくて、由紀夫をちょっとイラつかせたが、五分遅れで菜穂子がやってきました。
「ううん、まあね、菜穂子がいいのなら、陶房を持ったらいい」
「それで、五百くらい、いるのよ、出資してもらえますか」
「そうだね、所有者は大島織物で、契約していこう」
「ありがとう、大島さん、わたし、きっと、成功してみせるわ」
少し寒くなってきた夕方、午後6時といえばもう暗い。菜穂子の要件は、陶芸の工房を持つことで、その費用を大島由紀夫にたのんで、了解をえたところです。要件をすませた菜穂子は、ホッとした表情で、大橋を渡ったむこうの菊水で、由紀夫とふたりで食事をします。三十をこえて独身の菜穂子。そういうことでいえば由紀夫も独身、おおよそ同い年です。二十歳代ではなくて三十代ともなれば、それだけ大人になるというもので、結婚を意識しないわけではないが、菜穂子には暗黙の了解で、セックスフレンドの大島由紀夫です。とはいえ、お金の出資をたのんだ関係だから、ある意味、公然と交情してしかるべく関係です。

南座の裏手から建仁寺の門前を折れていくと風水ホテルがあります。和風の玄関で、むしろ遠方からの客が利用するという和風のラブホテルです。お顔がささないように配慮され、入り口では人とすれ違わないように工夫されています。由紀夫が先にはいり、その後を菜穂子が続きます。和風とはいえ完全防音、部屋の物音が外に洩れるという心配はありません。
「はぁああ、由紀夫、久しぶりだもの、可愛がってぇ」
商談を終えた後といった解放から、菜穂子は、由紀夫に甘えます。みえみえの甘え方で、かなり演技っぽいところが、陶芸家奥野菜穂子の持ち味です。マスコミ受けもいい菜穂子。雑誌への売り込みでもみずから取材して欲しいと編集者に連絡し、顔もいいから雑誌は取材してきます。
「月刊陶芸の取材があるの、陶房のこと話していいよねぇ」
裸になる前の話題、菜穂子が薄暗くした和室の椅子に座って、由紀夫にいうのです。由紀夫は、そんなはなしはどうでもよくて、早く菜穂子を抱きたい、その思いばかりです。抱きあうきっかけというものがあるとしたら、由紀夫は菜穂子が座った肘掛椅子のうしろから、肩に手をおき、その手を菜穂子の胸へとおろしていくのです。
「はぁああ、由紀夫ぉ、まってたのよ、この日を・・・・」
「そうだね、菜穂子の願望、自分の陶房だものな」
「うれしいの、わたし、だから、今夜は、素敵よ・・・・」
ブラウスのボタンを菜穂子が自分ではずします。由紀夫が背後から手を、菜穂子の胸へと入れていきます。ブラウスのボタンがはずれても、ブラジャーをつけている菜穂子。由紀夫はその上部から、両手をさしこみ、双方の乳房をつかんでしまうのです。

-44-

菜穂子をうしろから抱いている由紀夫が、菜穂子の背中の真ん中、ブラのホックをはずしてしまいます。もう三十を越えている菜穂子。そのからだは熟しているし、乳房は成熟しきっています。独身で、こどもを産んでいないからだの菜穂子だから、成熟しても若い形は残したまま、お椀を伏せたぷっくら乳房です。
「来月には、菜穂子の口座へ振り込むよう手配するよ」
「はぁああ、由紀夫さぁん、はぁああっ」
「いいね、菜穂子、それでいいよねぇ」
「うれしいわぁ、由紀夫さぁん、わたし、好きよ!」
風火ホテルの和室、まだ立ったままの由紀夫は、菜穂子と向きあい、抱きあいます。
「はぁああん、由紀夫さぁん、ああっ!」
すこししゃがみ込む格好で、由紀夫が菜穂子の左乳首を、唇を挟んで吸いだします。吸うというより揉む感じです。菜穂子は、由紀夫の唇に、小さな声を洩らしてきます。ブラウスのボタンがはずれ、ブラジャーがほどかれた菜穂子へ、由紀夫が情欲をもよおしてきます。紺のタイトスカートをすりあげる由紀夫。スカートの下は菜穂子の足、ストキングを穿いた足、ストッキングで包まれたさらさらの太腿を、まさぐりだす由紀夫です。和室とはいえ、ベッドルームには花柄の蒲団がかぶせられたダブルのベッドがあり、その手前は四畳半です。座敷机に座椅子がふたつ。壁際に、籐で編まれた肘掛椅子が置かれています。菜穂子は、その肘掛椅子に座って、由紀夫を迎えるのです。

籐で編まれた肘掛椅子の座部は少し大きめ、あぐら座りができる広さがあります。この風火ホテル特製、使い道はいろいろですが、ラブラブチェアほどには広くはありません。
「ああん、由紀夫さん、脱がせて、ストッキング、脱がせて・・・・」
甘える声で、菜穂子が由紀夫に、上目使いで、顔を見上げていいます。由紀夫は、肘掛椅子のまえに片膝たてて座ります。菜穂子の紺色スカートをめくりあげさせ、肌色ストッキングに包まれたお尻をあげさせ、腰のところからお尻の部分、ストッキングを脱がせてやります。
「はぁあ、ああっ・・・・」
菜穂子のお口から、ため息のような声が洩れ出てきます。もう、その気になっている菜穂子。放心したような表情になっている菜穂子です。
「うううん、いいのよ、由紀夫さん、もう、いいのよ、わたし」
「そうだね、菜穂子、あとは楽しむだけだ、おれたち」
ストッキングを足首から脱がしてしまったあとには、スカートをめくりあげてしまって、白いショーツを身につけた菜穂子が、由紀夫を立たせます。立たせて、スボンのベルトをはずしていきます。ベルトをはずしてジッパーを降ろして、ズボンを脱がせてしまいます。茶色っぽい柄のトランクスを穿いた由紀夫。菜穂子は、その由紀夫のトランクスのうえから、そのモノのうえをまさぐります。そのモノをトランクスのうえから撫ぜて握る感じで、菜穂子は右手を動かします。

-45-

籐の肘掛椅子に座ってスカートを、太腿のつけ根まで手繰りあげた菜穂子が、目の前に立った由紀夫のトランクスを脱がしにかかります。
「はぁあ、ああっ、由紀夫さん・・・・」
トランクスを腰から太腿のところまでおろしてしまうと、菜穂子は由紀夫の勃起しはじめたペニスを右手に握ってしまいます。左の腕は由紀夫のお尻へまわし、握ったペニスの皮を剥くようにして陰毛の生えるところまで手をおろします。菜穂子の目の前に、由紀夫の性器が突き出てきます。
「ああん、由紀夫さん・・・・」
菜穂子の唇がこころもち開けられ、勃起しだしたペニスの頭を、その唇にはさんでしまいます。由紀夫は、なされるがままに、立ったまま、腰を菜穂子の顔へと近づけるんです。
「いいよぉ、菜穂子、くちでしごいて、おくれよぉ」
「ふうう、ふうう」
菜穂子の息使いが荒くなってきます。男の性器の頭を口にいれた女のため息のような音が洩れてきます。菜穂子は自分の陶芸アトリエをひらくための資金を得たから、それへのお返しも含め、由紀夫へのいつくしむ気持ちを込めて、フェラチオをおこなってあげるのです。風火ホテルは菜穂子にとっては初めて、由紀夫と結ばれた場所です。もう三年前の夏、多良書房の書籍フェアーに行ってから、懇意になったのです。菜穂子のパトロンは由紀夫の父でした。大島織物が盛隆を誇っていたころに造られた織物美術館。そこへの調度品として菜穂子の作る陶器が、コレクションされてきたのでした。

トランクスを膝までおろして立ったままの由紀夫は、菜穂子の頭のうしろに手をおき、腰を突き出し、勃起したペニスを、頬張らせているところです。
「はぁああ、由紀夫さん、わたし、はぁああ・・・・」
その菜穂子が、口に咥えている由紀夫のペニスを抜いてしまって、疼くこころを表わす悶えの声を洩らしだすのです。風火ホテルの和室、敷居をこえた隣にはダブルベッドが用意されています。和室の隅の肘掛椅子に座っている菜穂子の胸へ、由紀夫の右手がおろされてきたのです。
「菜穂子、こんどはおれが、してやるよ」
立っていた由紀夫はトランクスを脱いでしまって、畳の上にひざまづきます。おおよそ肘掛椅子に座った菜穂子の高さとおなじです。由紀夫がブラウスのボタンをはずしてやろうとすると、菜穂子は、由紀夫の手を退けさせ、自分でボタンをはずしだします。ぜんぶのボタンをはずして、ひろげると白いブラジャーに包まれた胸があらわれます。そう明るくはない和室に菜穂子の肌と白いブラが、由紀夫の目には新鮮です。スカートは紺色、すでに太腿の根元まで引き上げられているから、由紀夫にはパンティの白い股布がはっきり見えます。
「はぁああん、由紀夫さぁん、わたし、うれしい・・・・」
ブラジャーのホックをはずした菜穂子の乳房、お椀を伏せたようなと表現されるにふさわしい菜穂子のふたつの乳房へのなかへ、由紀夫の顔が埋められてしまいます。

-46-

ふたつの乳房を唇でまさぐったあとには、菜穂子の穿いた白いパンティを脱がしにかかります。籐の肘掛椅子に座る菜穂子、胸がはだけた菜穂子、紺のスカートをめくりきっている菜穂子。菜穂子の腰から包まれるパンティの、腰紐の左右に指をいれ、おろしにかかる由紀夫。菜穂子は従順にお尻を浮かせてパンティを脱がせてもらうんです。
「あぁああん、由紀夫さぁん、すきに、好きにしてぇ」
「ふふん、菜穂子、してやるよ、好きなようにしてやるよ」
菜穂子が穿いた白いパンティが、お尻をぬかれ、膝までずらされ、そのまま足首まで落とされ、足首から抜かれて畳の上に置かれます。菜穂子の座る肘掛椅子のまえに膝を畳におく格好で、菜穂子の膝に手を置いて、左右にひろげさせます。力を抜いた菜穂子の膝が左右にひろげられると、由紀夫の目には菜穂子の股間が、目の前に見えます。黒い陰毛、まだ開かない縦割れ陰唇、由紀夫は情欲に満たされます。
「はぁああ、ああん、だめ、だめよ・・・・」
視姦される菜穂子のからだがうごめきます。唇がうすくひらかれ、吐息のような声が洩れてきます。由紀夫にお金の支援を求めて、応じてくれた安心感からか、こころをひらいている菜穂子です。
「はぁああ、はぁああ」
由紀夫の息づかいが乱れてきます。菜穂子の陰部をみた由紀夫が、発情し始めるのです。由紀夫の顔が、菜穂子の太腿にあてられ、そのまま根元の股間へ、顔が当てられます。菜穂子は足裏を肘掛椅子の座部にもちあげて膝をひろげてMすがたです。
「ああっ、由紀夫さぁあん、ああっ、ああっ」
股間へおしつけてくる由紀夫の頭のうしろへ手をまわす菜穂子。クンニを受け入れていく菜穂子です。

菜穂子の半裸体を目の前にして、男の由紀夫には、約束した500万の振りこみを、経理にどうして通そうかとの思いが、よぎります。菜穂子の股間、唇を押し当て、舌を這わせて菜穂子を味わう由紀夫です。頭のなかはそればかりではなくて、多良書房の運営資金についても、どうしようかとの思いが頭をよぎります。刹那の思いはそれこそ刹那の思いで、それをふりきるようにして、由紀夫は、うえへ伸ばした手の平で、菜穂子の乳房をまさぐりながら、顔を股間につけているんです。
「ああん、由紀さん、由紀夫さん、ああ、由紀さん・・・・」
菜穂子の由紀夫を呼び呼び方が、由紀さん、由紀夫さん、といりまじります。菜穂子にはお金を工面する由紀夫の心配なんて存じません。そこまでの知恵もわかなくて、由紀夫には、お金が湧いてくる人なのだとの思いだけがあるのです。
「はぁああ、ああん、そこ、そこ、そこよぉ、ああっ」
唇を股間に当てられ、細部のことは菜穂子にはわからないけれど、刺激して欲しい処へ舌先が届いたときには、其処だというんです。おんなのからだの性感の急所を、まさぐってもらっている菜穂子なのです。三十を越えていよいよ自分の工房をひらくことができると思う菜穂子には、夢がバラ色になって目の前にひろがるんです。
「あああっ、うれしい、わたし、うれしい、ああっ、由紀さん・・・・」
「うううっ、菜穂子、うれしいか、ほうら!」
「そこ、そこ、ああ、ああっ、いい、いいっ・・・・」
「ここやろ、菜穂子、ここがええんやろ!」
菜穂子の股間から顔がはずされ、指を一本挿しこまれ、舌先が届かなかったヌルヌルの、奥のほうをまさぐられだす菜穂子です。

-47-

風火ホテルのベッドルームは四畳半の広さです。和風の部屋と襖で仕切られるダブルベッドのルームベッド横、壁にかけられた横長のカーテンをひらくとそれは鏡です。ベッドのうえの男と女が鏡に映る。男と女は自分たちの裸の姿を見て、いっそう興奮するのです。大島由紀夫と奥野菜穂子は、30才を過ぎた男女です。愛欲にかられてセックスを行う、からだの熟しかたは、崩れ落ちそうな果実です。全裸になった由紀夫と菜穂子はベッドの上で抱きあっています。菜穂子の背中が鏡に映って、由紀夫がその菜穂子の背中からお尻、お尻から太腿を、目の前の乳房をまさぐりながら見ています。
「ああん、ああん、由紀さん、あああん」
菜穂子の乳房はこんもりと盛り上がっていて、肉付きがいいから、寝てもぷっくらです。由紀夫に乳首をつままれて、刺激を注入されるから、菜穂子は無意識に、お声を洩らしてしまうのです。
「ああん、はぁああん、ああっ、ああっ」
由紀夫にお尻を抱かれ、腰を由紀夫に引き寄せられ、裸体を密着させる菜穂子。由紀夫の腰の勃起ブツが菜穂子のお腹にあたって、お臍の下部でこすれます。由紀夫はこのとき無言です。菜穂子は抵抗することもなく、仰向けになり、みずから太腿をひろげて膝をたて、由紀夫を導くのです。
「ほぉおお、菜穂子ぉ、おおおっ」
仰向いた菜穂子の、立ててひろげた膝の間に、由紀夫がはいって座ります。足を投げ出し、足のふくらはぎが菜穂子の脇腹に、上半身を立てた由紀夫のお尻と腰が、菜穂子の股間へと近づけられます。

三十を過ぎた男女が交合するのに理屈はいりません。性欲、欲望をいだいた男女が、密になって溶け合うのは本能です。そこに到る過程があるとしても、いまはもう、菜穂子は由紀夫を受け入れ、由紀夫は菜穂子を欲望の対象なのです。
「あああっ、ひぃいいっ、由紀さぁん、ひぃいいっ・・・・」
「おおおっ、菜穂子ぉ、おおっ、おおっ」
菜穂子のヴァギナにぶすっと、挿しこまれていく由紀夫の勃起ブツです。菜穂子は身を震わせ、あごをあげ、頭をゆすって応えます。ぶすっと挿しこまれた由紀夫の勃起ブツが、菜穂子の蜜に絡みあいます。先に指まで入れられてうごめかされた菜穂子は、すでに蜜壺は濡れきって、由紀夫の勃起ブツに絡まるのです。
「はぁあああ、ああっ、はぁあああ、ああっ」
菜穂子が、悶えます。からだの奥が、疼きます。陶芸工房開設の援助金500万円を約束してもらった菜穂子には、夢と希望とそれに快楽、なんの不安も交情中にはありません。由紀夫が挿しこんでくる男のモノを、受けとめる菜穂子には、陶芸家としての表の顔とはうらはらに、情欲に喘ぎ悶えるからだです。
「いいっ、いいっ、あああん、ひぃいい、いいっ!」
由紀夫が射精の体制へ入る前なのに、菜穂子はもう軽いオーガズムを迎えてしまいます。由紀夫は、菜穂子がオーガズムを迎え切る前に、勃起ブツを抜き去ってしまいます。これが何度か繰り返されて、由紀夫の射精、スキンをつけての射精に至って、ついに菜穂子が昇りきってしまうのでした。















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最新更新日 2015.1.3


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