耽美試行

はなこよみ(3)-1-

 18〜20 2014.9.4〜2014.9.7

    

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大島織物の専務を肩書にもつ大島由紀夫は、若手の実業家として地域経済界から期待されているところです。父親の大島育三が社長、まだ健在な祖父大島座右衛門が会長の経営陣、同族会社です。いずれ跡取りをまかされている由紀夫ですが、いまはもっぱら稀覯本をあつかう多良書房に気持ちが傾斜していて、芸術家たちと交友を深め、多少はパトロン的な立場だから、もてはやされます。
「お商売もさることながら、大島さんがいらして、わたしたちを支えてもらえて」
多良書房に集まった絵描き、田能村明人を筆頭に、まだ二十代の後半で、写真家を目指す山内武雄、油絵を描いている村山修一、評論を手がけたいと言っている三宅卓磨、それに女子は陶芸家の奥野菜穂子、女子大学生手塚直美と梶原真衣。大学生の直美と真衣は、多良書房でアルバイトしていて、日常の運営はこの二人が行なっているんです。
「いやはや、田能村の作品展、盛大に終わってよかったよ、山内くん、個展はまだか」
由紀夫の発言に、写真家志望の山内武雄が、名指しされてうろたえた顔つきになります。
「それは、個展、したいですけど、金もいるし、ですよぉ」
山内の写真は、斬新なイメージで女子のセクシュアルな側面を表現するイメージで、由紀夫はそれなりに評価しているが、世間はそんなに甘くはなくて、流行を追ってるだけだ、との批評もあって、まだデビューしていない28才です。
「やったらええやん、個展、この多良書房の壁面つかったら、評判になるんじゃない」
評論家を目指す三宅卓磨は、山内の写真イメージは二番煎じだと思っていて、事実、世間でもそういう評価なのです。

オーナーの大島由紀夫を交えて男衆五人と女衆三人、それとなく猥談は避けられて、芸術論、作家論、いやはやそんな堅苦しいものではなくて、他人批判、売れてる作家を嫉妬批判するんです。奥野菜穂子は、すでに東京のデパートで個展に近い作品展を開いてもらえて、三十越えて、いよいよ作家としてひとり歩きできそうな気配です。美大出身、美貌は満点、ほんのり醸しだされる菜穂子の空気感は、それなりのセクスアピールで大人の男を魅了しています。
「ううん、そやからぁ、日本って、せまいでしょ、世界へいかなくっちゃあ」
「東京経由、ロンドン?、それともニューヨーク?、菜穂子さんなら、NYかなぁ」
「美術批評で菜穂子さん、四ページ記事、写真つき、絵付けしてる菜穂子ってセクシー!」
「いやですよぉ、田能村さん、でも、わたし、田能村流エッチさ、好きよ!」
「おおハッピー、菜穂子がおれに惚れてくれる、抱きたいねぇ」
「いやですよぉ、田能村さん、冗談ばっかりぃ」
ケータリングの料理皿にビールや焼酎やウイスキー、土曜会の集まりです。月に一回、第四土曜日の夜七時から始まる夜会、メンバーは十数名いるけれど、今夜集まったのは、大島由紀夫を入れて六名、プラススタッフ女子二名の八人です。花はやっぱり女性、奥野菜穂子、ビールを飲んでほんのり頬が高揚してきているんですが、多良書房のフロアー、照明を落としているから、そんなに目立ってはいませんが。奥野菜穂子のパトロンは、大島織物の社長、大島育三です。美大生菜穂子の陶芸作品を、器館をとおして買ってもらえて、それから作品を創るたびに買ってもらえる関係が、五年ほど続いたのですが、そのころの菜穂子は二十歳代の半ば、陶芸に専念するためのパトロン、お父さま、旦那さま、イケないことと思いながら、ここまでやってこれたのです。

座布団を敷いて向きあって、真ん中に料理がある座り方って、車座。男子はあぐらが組めるが女子は困ります。女子は原則、スカート姿、いつの間にか土曜会に参加する女子はスカートを穿く、というようなふうになっています。もともと、多良書房が扱う書籍とか小さめの作品とか、エロスをテーマにしたモノを扱っているし、非売品ながら特別仕立ての写真集なども扱っているから、そういうことも了解した女子が、この多良書房に集まってきているといえます。
「いやですよぉ、そんなに、みちゃ、いやですよぉ」
菜穂子が田能村の目線に、クレームをつけます。座布団に女すわりする菜穂子の膝が、いいや太腿の半分までが露出していて、膝をずらしたりあげるたびに、菜穂子の奥が見えてしまう位置に、田能村があぐら座りしているから、それは田能村が目線を向けてくることは、仕方がないことです。
「そやけど、菜穂子、色っぽいんだ、おれのモデルになってくれよ」
「田能村さんのモデルって、あれなんでしょ、殿方がおよろこびになる!」
「そうだな、菜穂子の特別スケッチ集なんて、いいかもなぁ」
「ええ、田能村さんがスケッチなら、ぼく、写真集つくりたい」
田能村の脳裏にも、菜穂子の脳裏にも、写真家を目指す山内の脳裏にも、イメージされている絵は、世間では見せられない奴、ウイーンとか、ニューヨークとか、ならばそれらは扱われる物件、日本であれがその一部が隠されてしまう、そういう作品です。

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夜の七時からはじまった土曜会、午後の十時にはおひらきとなります。そのあとは、二次会ということになるのですが、個別、男女がペアになって、夜中を過ごす、というのが土曜会のメンバー相互の取り決めのようなもの。といいながら、そのペアとなる相手は決まっていて、大島由紀夫には奥野菜穂子が、ペアになっているのです。田能村は女子学生の梶原真衣と高瀬川沿いのラブホへ行くみたい。女子大生の手塚直美は、男子三人とともに北山のマンションへと向かいます。由紀夫と菜穂子は、セックスフレンド以上に、持ちつ持たれつの関係になっていて、その打算もふくめセックスする関係です。
「だから、陶房を開きたいの、そろそろ」
「援助するけど、場所は、何処だ」
「銀閣寺の、ほら哲学の道の、山ぎわの庵だけど、表はお店よ」
「そうなの、それで、めんどうみてほしい、そうなんだよな」
由紀夫は、菜穂子が好きです。一緒になってもいい、とも思うが家庭をつくることには、菜穂子が乗ってこない、実業家としての大島由紀夫と陶芸家としての菜穂子は、自分を置く場所が違う、と思うのです。好きならどうでもなる、という年齢は過ぎてしまって、三十をすぎた由紀夫と菜穂子なのです。

「ああん、だめよ、ゆきさん、だめだよぉ」
「まあまあ、もう酔い、醒めてきたんじゃないか、菜穂子」
「はぁああ、もっと、やさしくしてよ、ああん」
演舞場に二人だけ、抱きあって、からだをまさぐりあう由紀夫と菜穂子です。菜穂子は膝上10cmの白っぽいワンピース姿、由紀夫は綿のズボンにシャツすがた、端麗な美女とダンディな男子といった感じで、人前では振るまうけれど、二人だけになると、それは男と女の関係、快楽を求めて、欲望を満たせていくのです。
「なほこ、ほうら、四つん這いだぜ、ほうら」
アンティークなイギリス製テーブルへ、菜穂子に上半身を伏せさせて、うしろからワンピースのスカート部分をめくりあげてしまう由紀夫。
「ああん、いやぁああん、ああん」
パンティを穿いたお尻を丸出しにされ、布のうえから撫ぜられる菜穂子。
「ほら、菜穂子、脱がしてやるから、よろこべ!」
ワンピースを着けた上半身をテーブルに伏せたまま、お尻を突きだす格好で、パンティを降ろされてしまいます。腰から臀部を抜かれたパンティは、太腿の根っこのところで留められます。そうして由紀夫の右手の平が、菜穂子の股間へ当てられ、いきなり、揉まれだしてしまうのです。

菜穂子、木のテーブルに腕とともに伏せた顔をあげ、立てた足は閉じているのに、由紀夫の指が濡れだした処へ挿しこまれてきて、ぐじゅぐじゅ、刺激されだしてきます。
「はぁあ、ああっ、だめ、だめ、もっとゆっくり、やさしくぅ・・・・」
「ほら、菜穂子、濡れてるぜ、ぐちょぐちょじゃないか!」
「ああん、いやぁああん、そんなことぉ・・・・」
「うれしいか、おれの指、咥えて嬉しいか!」
お尻を?きだされ、ワンピースの腰のベルトがはずされて、上半身はまだきっちりと、ワンピースを着付けたままの菜穂子。由紀夫が菜穂子から指を抜き去り、腰から腹へと両手の平を上にして挿しいれます。
「ああん、ゆきさん、ああん」
「ほら、揉んでやるぜ、菜穂子のおっぱい、ほら!」
菜穂子の胸を覆ったブラジャーを押し上げ、乳房を握ってしまいます。握ってモミモミ、うつむいたからだのしたになった乳房が、こころもちぷらぷらしていて、それを由紀夫が揉んでやるのです。ヤギの乳を搾る要領で、由紀夫が菜穂子の乳を搾ります。と同時に、由紀夫、すでに脱いでしまった下半身、勃起のブツをうしろから菜穂子の股間へ、挿しこんでしまうんです。

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木のテーブルに上半身を伏せる菜穂子をうしろから抱きにかかる由紀夫。三十をこえた菜穂子と由紀夫、いまさらこんな関係がとやかくいわれる話ではなく、大人の関係だから、責任も始末もなにもかも、処置出来る自信があります。同族会社の専務大島由紀夫の財力をあてにして、陶芸家として自立したい菜穂子、由紀夫との関係を大切にしておきたい気持ち、それに性欲を満たしてくれるひととして。
「はぁああ、ゆきさん、はぁああん」
テーブルに伏せた上半身、着ているワンピース、腕は通したまま、ブラと一緒に首筋にまでめくりあげられ、全裸同然の格好で、バックから突かれ、乳房を揉まれている菜穂子。
「ほらぁ、菜穂子、足を、ひろげろ、ほらぁ!」
由紀夫は、右手は菜穂子の胸に回して左手で、腰を抱くようにして、腰の勃起ブツをひろげさせた尻の下へ、ぶっすり挿しこんでいます。
「ああん、ゆきさぁん、ひぃいい、ひぃいい!」
「だからぁ、ほらぁ、足を、ひらいて、尻、突きだせよ!」
足をひろげているつもりの菜穂子です。でもぶすぶす、うしろから挿し抜きされてお腰をよじり、突き上げたお尻をふって、太腿が閉じだして、お膝が閉じだしてしまって、由紀夫がその足をひろげさせるのです。

バックからの行為は、菜穂子にとっては屈辱的な感覚です。相手にしている由紀夫の顔が見えない、自分で自分の身を抱く格好になってしまって、ぐっとこらえて、足をひろげて、ぶすぶすされる。由紀夫にとっても、それだけでは物足りなくて、いくつもの体位を交えて、欲望を満たしていくのです。
「ああん、ゆきさん、うちが、うちが、してあげるからぁ!」
バックスタイルから向きあう格好、菜穂子はワンピースとブラを脱ぎ去って、素っ裸になります。どうじに由紀夫も全裸になっていて、抱きあいます。抱きあって、ここで今夜の初めてキッスを交わし、舌を絡め、高揚してくる菜穂子が、座り込み、立ったままの由紀夫の腰からお尻を抱きしめて、唇に、腰からの勃起ブツ、いま寸前まで自分の秘所にはまっていたブツを、唇から口の中へと挿しいれて、可愛がってあげるのです。
「ううっ、ううううっ、ふうううっ」
左の腕を由紀夫のお尻にまわして抱く格好、右の手は由紀夫の腰の勃起ブツ、その根元を握って上半分を口の中へ挿しこんであげます。まるで母親、いたずらっ子の由紀夫をなだめるかのように、そのつるっとした先端の頭を舐め舐め、握った手で皮を押しこんで、?いてしまったその首元を、こんどは舌先でちょろちょろと舐め上げていきます。
「おおっ、おおっ、菜穂子、いいぜ、めっちゃ、いいぜよぉ」
「ふうう、ふうう、ふぅうううん」
ぺちゃ、ぺちゃ、くちゃ、くちゃ、淫らな音が、二人だけの演舞場にひろがっていきます。

陶芸家奥野菜穂子は、AKBのメンバーほどに若くはないから、世間でもてはやされるということはないけれど、その器量の良さは、陶芸家としてデビューできたことに、貢献しています。東京でのデビューは青山のギャラリーでした。顔写真、ろくろを回している陶芸作家風景、どうみてもセクシュアルアピール、買い求めてもらえるおじさんたちへのアピールでもありました。
「ああん、ひぃいい、ひぃいいっ、ゆきさぁああん」
「おおおっ、菜穂子ぉ、いいねぇ、おおおおっ」
アンティークなテーブルに仰向いた菜穂子はお尻の半分がはみ出しています。その前に立ったままの由紀夫が、腰のモノを菜穂子に挿しこんでいます。菜穂子の足は膝裏を、由紀夫の腕にのせられて、そのまま、上半身の方へと折られて、股間が開かれ、斜め上向きです。そこへ、由紀夫の勃起ブツが、挿入されて動かされ、菜穂子、体内の深い処をほじくられ、その刺激が快感で、からだがふくらみすぼんで反応し、じわじわと快楽の極みへと、昇っていくんです。
「ひゃああん、ひぃいい、ひぃいい、ゆきさぁあん!」
菜穂子の洩らす喘ぎの声に、由紀夫だって反応します。勃起ブツ、びんびん、ここらで菜穂子を昇らせきって終えようかと脳裏をかすめるさいごの時。たっぷり、あとが控えているから、ここは、正常位で、スキンをつけて、激しく動かし、菜穂子を昇らせ、完全満足の一歩手前で、射精を開始させた由紀夫です。





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最新更新日 2014.12.13


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