耽美試行

さくら協奏曲(8)

 36〜40 2014.2.19〜2014.5.8

    

(8)

-36-

旭旅館の二階イ号の畳部屋は四畳半、春子が約束の時間より、少し早めにやってきて、ひとり部屋で待つ時間です。哀れな気持ちがふつふつと、こころのなかに沸いてくる、春子の旦那は作次郎、奥さまがいらっしゃるから日陰者、赤ちゃんが欲しい、そう思う春子ですけど、子どもはいらぬと作次郎はいいます。
「お嬢ちゃん、かわいい子やから、ねぇ」
「いやぁん、おかみさん、ほんとですか、わたし、かわいいですか」
「かわいいよって、旦那さん、おもいっきり可愛がって、くれはるんでしょ」
旭旅館の女将は、麻雀が好きで、ヒマにあかして麻雀を打つ、相手は旦那衆、作次郎もそのひとりです。
「待たせて悪かったなぁ、春子、外は寒いけど、あったかい」
「さっきから、女将さんが、暖めておいてくれはったのよ」
火鉢のなかで黒炭が真赤になって炎がたっています。作次郎が春子に逢うのは十日ぶり、そんなに長い日々ではないけれど、待ち遠しかった。春子はブラウスにカーデーガン、ロングのフレアースカートを穿いて来たところです。

四畳半の畳部屋、布団が敷かれています。壁際には鏡台が置かれ、床の間には交合している春画浮世絵が掛けられています。
「ああん、旦那さん、わたいかって、待ち遠しかったよ」
「ちょっと都合がつかんかったんや、いろいろと、あってなぁ」
「わたいのことですか、わたいのそんざい、わたしのたちば」
「いや、本家の兄が、ちょっとなぁ、逝ってしまいそうなんや」
「おくさま、わたいのこと、知ってはるんでしょ」
「まあな、そんなこと、どうでもええやろ」
春子がレコード店を営む作次郎に、抱かれていきます。春子は、そのレコード店の従業員、売り子をしてお給金をもらっています。どうして、こんなところで逢引する関係になってしまったのか、春子には、生活するうえでいろいろと助けてもらった恩義のようなものを、感じて、なされるがまま、旭旅館の一室にいるんです。

畳の上に敷いた赤い座布団に、足を崩して座った春子を、うしろから抱いてくる作次郎です。鏡台の鏡に春子の姿が映ります。抱かれて腕を前にまわされて、カーデーガンを着たまま、ブラウスのボタンが外されてしまう春子。ブラウスのボタンが外されると、若い春子がするブラジャーを、はずしてしまう作次郎です。
上半身のまえが露わになり、乳房があらわれ、作次郎が春子の乳房を、下から手ですくいあげてきて、軽く揉まれてしまう春子。
「ああん、旦那さぁん、はぁあん、わたい、ああっ、ああっ」
後ろから左腕で抱かれて乳房をまさぐられながら、崩した足のスカートをめくられていく春子。白い肌、太ももが露わになり、作次郎の手が太ももの根っこを撫ぜてくるから春子、こそばい感覚に身をちじめ、それからなされるがまま、作次郎のいうまま、いわれるままに、ふるまっていく春子です。
「ああっ、はぁああっ、旦那さまぁ、ああん」
スカートがめくられ、白いズロースが露わにされて、作次郎がそのなかへ、右の手を挿しいれてくるのです。

-37-

挿しいれらた右の手で、股間のあたりを弄られながら、胸にまわされた左手で、膨らんだ乳房をが揺すられる春子。目の前の鏡台に、露わな春子の胸が揺すられ、めくれたスカート、太ももが露わになって、白いズロースのなかに手がいれられているのが映ります。
「ああん、旦那さまぁ、ああっ、あああっ」
ズロースのなかに入れられた手の指が、湿ってやわらかい恥じらう唇をなぶられてしまって、春子の悶えだします。うしろから女体を抱く作次郎、鏡の中の春子を見ながら、春子が感じて悶える箇所をまさぐってやります。
「はぁああ、はぁあああっ」
「春子、ぬれてるね、ぬるぬる」
「はぁああ、いやぁああん、旦那さまぁ」
「そやかって、ぬるぬる、春子のなか、ぬるぬる」
ズロースのなかに入れられた手の指が、股間の柔らかい唇を割り、なかへ挿入されていて、春子、体感にくわえて耳元で、ささやかれるのです。

旭旅館、二階イ号の部屋は四畳半、春子は21才、作次郎には妻子がいるから、妾の身、あやうい気持ちにゆれうごきます。
「はぁああ、旦那さまぁ、わたい、あかちゃん、ほしい」
ゆらゆら、からだにそそがれる感覚に、春子がうわごとのようにことばを、ことばにしてしまいます。
「あかんで、春子、ややこは、あかん、あかん」
ズロースを脱がしてしまった春子のなかへ、指を挿しこんだまま、うわごとに応える作次郎です。
「ああっ、あああん、旦那さまぁ、ああっ」
ズロースが脱がされたあとにはスカートが、脱がされてしまって腰からしたが、裸にされた春子。作次郎がズボンを脱ぎ、パンツを脱ぐと、黒毛の覆われた腰前からにょっきと突き出た代物、立ったまま、春子の前に立ち、春子の口に挿しいれさせてしまいます。春子は、作次郎の勃起ブツを頬張り、根っこを握ります。
「ふぅうう、うう、ううっ、ふぅうううっ」
勃起ブツを握った春子の右手、握ったまま、ぎゅっと陰毛に、押し当て?いて、半分ほどを口に咥えている春子。カーデガンもブラウスも、ボタンがはずされていて露出した、乳房を作次郎になぶられながら、女すわりの春子、男のモノを咥えて、しゃぶって、感じていきます。

四畳半の床の間に、交合している春画浮世絵が掛けられています。鏡台が置かれ、布団が敷かれた畳敷きの四畳半、小さな机は女性が手紙を書く文机、敷いたお布団へ寝る前に、春子はこの文机に座らされます。
「ああん、旦那さま、ああ、あああん」
文机にお座布団を敷いてお尻を置いた春子のまえに、作次郎があぐら座りです。春子に奉仕させたあと、こんどは作次郎が春子に奉仕していくんです。このかぎりにおいて、春子が妊娠することもありません。
「はぁあ、ああ、ああん」
座布団を敷いた文机、その縁にお尻を置いて座った春子、太ももをひらき、股間をひろげたところへ、作次郎の顔が密着してくるんです。
「ああ、いい、ひぃいい、旦那さまぁ、ああっ」
作次郎の頭をかかえ、太ももをぐぐっとひろげ、胸を張る格好の春子。
「おおお、春子、うんめぇ、春子、春子の味、おいしいねぇ」
じゅるじゅる、作次郎が春子を啜る音を奏でたあとにはお顔を離し、春子の顔を見てやり、ことばを紡いでやります。ことばを聞くと春子は、なにやら羞恥の気持ちに見舞われながらもからだの奥が、しっとりと濡れてくるのを感じます。

-38-

あぐら座りの作次郎が、文机に座布団を敷いてお尻をおいた春子の膝に、手を置いて、ひろげようとします。
「ほら、春子、もっと、あしを、ひろげて」
「はぁああ、旦那さまぁ、あああん」
足の力を抜いた春子が、膝をひろげ、太ももをひらいて、手はうしろ、上半身を反り返えらせます。160度にもひろげられた太ももの根元を、作次郎に見られているのを意識すると、なにやら恥ずかしいような、うれしいような気分になっていく春子です。カーデガンもブラウスもブラジャーも脱いでしまって素っ裸になった春子。作次郎も素っ裸になります。
「ほうら、春子、かわいいなぁ、やわらかいねぇ」
「ああっ、旦那さま、あああん、いけないですぅ」
「春子、うれしいか、こんなことされて、うれしいんやろ」
膝をひろげきり、太ももをひらききった春子の股間に、作次郎が逆さに手を置き、春子の陰部へ、中指を挿しこんでしまうのです。

「足、閉じたら、あかん、膝を、ひろげた、ままに、しておくんや」
「はぁああ、そやかって、ああん、旦那さまぁ、わたい、ああっ」
文机を椅子にして、膝をひろげた裸の春子。あぐら座りの作次郎に太ももの間にはいられ、左腕で腰を抱かれ、右の手の平が股間にかぶさり中指だけが局部に、挿しこまれてしまったのです。
「春子、ええなぁ、やわらかいなぁ、じゅるじゅるや」
「ああん、旦那さまぁ、わたい、もう、ああ、あかちゃんほしい」
「あかんで、春子、ややこはあかん、あかんで、そやから指で」
ぐちゅぐちゅ、指のうごめきで、春子はからだの奥が燃えてきて、本音がことばとなって出てきます。妊娠することがどういうことかとも深くは考えられない春子には、こどもがほしい、その感覚がうやむやと心の中にうずくまっているのです。
「かわいいなぁ、春子、やわらかいなぁ、春子」
局部のなかをなぶられる春子には、じんじんと得体のしれない感覚が、からだのなかをめぐります。

敷かれた布団に横たえられた春子、もう、じっくりと濡れてしまって、なされるがまま、膝をたて、太ももをひらき、作次郎がかぶさってきて、腰の勃起ブツが挿しこまれてきて、うううっと、呻いてしまいます。
「ほうら、春子ぉ、おおおっ、ほら、ほら」
「はぁあ、ああっ、ああっ、ああっ、ああっ」
男のブツが女の器に挿入されて、密着されて、蠢かされて、春子は正気を失い、ただひたすらに作次郎にすがりついていくのです。
「ああん、ひやぁああん、だんさん、あああっ」
乳首を唇に挟まれて、揉まれて、春子、腰のモノは挿しこまれたままだから、春子、疼いて悶えて、呻いてしまいます。
「春子、あかんで、ややこは、あかんのやで」
「そやかって、だんさん、わたい、あかちゃん、ほしいですぅ」
からだがひらく、春子、奥の扉が開いて、受胎をほのめかされて、その気になっているから、春子、禁断の胎児を孕むかもしれない。

-39-

春子がまだ二十歳になる前、河原町のクラシック音楽を聴かせる喫茶店に勤めていたときに、毎日のように通ってくる知性ある顔立ちの男が森田作次郎だと知ったのは、ふとしたはずみで、珈琲茶碗にはいった珈琲をこぼしてしまって、ズボンを汚れさせてしまったときからです。長崎から集団就職で大阪の工場に就職して半年あまり、転職を繰り返していた春子には、すでに数人の男性と仲良くなって、愛を結ぶ関係になっていたけれど、作次郎から誘われたときには、けっこうすさんだ気持ちがあって、なりゆきまかせの生きかたに、なにとはなく不安を抱いてしまう心情でした。
「レコード店してるん、店員探してるん、来やへんか」
作次郎に魂胆がなかったとはいえない。色白で美貌も整った春子の、かげりあるものうげな表情が心をとらえたことは確かでした。
「森田レコードの店員さんになれるんですかぁ、嬉しいです」
社員寮があって、その部屋が空いているからと、アパート形式になっている清心荘の六号室、四畳半の部屋を使うことになったのでした。

春子の心に、あの時の光景が、よみがえってきます。作次郎から誘われて、この旭旅館へ来た日のこと。すでに男子のからだを知っていた春子だったから、恐れはなかったけれど、こころが悲哀を感じていました。
「ああ、だんさん、わたい、ああ、もう、いけないわ、ああっ」
「おおお、おいしいわ、春子、とろとろやねぇ」
「はぁああ、ああん、はぁあああっ」
文机にお尻を置いていた姿勢から、敷かれた布団に寝かされて、裸のからだを重ねられた春子。作次郎の勃起ブツがヴァギナに挿入されてからというもの、しきりに呻き声をあげてしまうのです。からだのなかをえぐられる快感。じわ〜っと満ちてくる快感が、大きな波となって打ち寄せてきて、春子、海を泳ぐ魚のようにからだをくねらせ悶えてしまうのです。
「ほおお、春子、たぷたぷおちち、おおおおっ」
「ううっ、ああっ、だんさん、わたい、ああっ、あああん」
「うえから、のりいな、春子」
仰向いて寝そべった春子のかわりに、作次郎が仰向いて寝そべり、布団のうえで乗馬の格好にさせます。

作次郎の勃起ブツを股間の谷間に埋め込んで、お尻をぺたんと作次郎に置いてしまうと、男のモノが女のなかにずっぽりと埋まってしまいます。密着してしまった男女のモノが、密着したまま、こすりあわされ、刺激され、そこからの感覚がからだのなかを駆けめぐります。
「春子、やわらかいなぁ、とろとろ、おおおっ」
「はぁああ、ああん、だんさん、わたい、わたい」
「ええ気持ちなんやろ、春子、もっともっと、もっとだよ」
「はぁああ、だんさん、もっと、もっと、もっと、ほしいですぅ」
春子がお尻をこころもち浮かせ、作次郎が腰をひねります。男のモノが春子の襞をこする感じで、じんじんとした刺激を受け入れます。もう無意識にとろとろと、春子の恥じらい水が流れでてきます。
「ほら、春子、腰を浮かして、お尻をあげろ」
春子、囁かれるままに尻をあげ、作次郎の勃起ブツ、抜ききる寸前のところまで、抜いてしまうのです。
「そのまま、お尻をおろすんや、おろしてあげて、するんや」
「はぁああ、だんさん、おしり、おろして、あげて、するんですかぁ」
いうまでもなく、この動作では、春子のヴァギナに、作次郎のペニスが、挿されて抜かれて、この繰り返しがおこなわれるのです。

-40-

旭旅館の四畳半、ひところは遊郭の営みがあった部屋ですが、いまは作次郎と春子の逢瀬の部屋です。
「はぁああ、だんさん、ううっ、ああっ」
膝をひろげ、太ももをひらいて、中腰になった春子が、お尻を、まっすぐに降ろします。すると作次郎の勃起ブツが、春子のヴァギナにぶすぶすと入ってくるから、たまりません、ずきんずきん、感じてしまうんです。
「だんさん、ああっ、わたい、ああっ!」
降ろしたお尻をそのまま持ち上げ、挿しこんだ勃起ブツの頭を残して、抜いてしまって、ふたたび、お尻を降ろす春子です。からだがうずうず、ずきずき、疼いて、満ちてくる潮に、からだをまかせていく春子。作次郎が仰向いたまま、春子のお尻を抱く格好で、腰の上げて下げてを助けます。作次郎としても挿入して擦られる感覚が、春子の温みで、なんともいえない快感をそそられるんです。
「春子、ほら、もちあげて、じっと、してろ」
尻を持ち上げさせて、半分抜いて、作次郎が腰をひねり、腰を突き上げ、春子のヴァギナに挿しこんでやります。春子は、突き上げられるたびに、悶えの呻き声をあげてしまいます。

作次郎と春子がいっしょにいること、それだけで、おたがいの気持ちがうるみます。交わされる情、交わされる気持ち、潤むこころ、締めつけられるような幸福感、愛。作次郎は春子に愛を感じ、春子もまた作次郎に愛を感じます。束の間の幸せであっても、春子にとっては、そのときそのとき、それがすべてです。
「だんさん、わたい、あかちゃん、ほしい・・・・」
「あかん、あかん、春子、あかんで」
「そやけど、だんさん、でけたら、どないします」
交情がおわったあと、春子は、何度目かの言葉を、呟くのです。作次郎には妻があり、小学校に上がる前の男児もいる身、そんな男と関係をもってしまった春子には、それでもかけがえのない男の人。まだ高校生の征二にも、うらやましさの気持ちと若い高校生への興味があって、好きな男子として意識しているけれど、それは作次郎にたすけられる生活の力とは、異質なことです。

おえたあと、空をつかむようなむなしい気持ちが、春子のこころの本音です。からだが満たされても、こころが満たされない。作次郎から好きだと言われて、可愛がられていることがわかっていても、やはりむなしい気持ちが満ちています。
「ほんで、でけたんかいな」
「いいえ、だんさん、でけてへんけど」
「でけたら、わかれる、それだけや、そやから、あかんで」
敷かれた布団のシーツが、濡れているのは、春子が流した潤い水、愛の交わりの証です。春子にとって、ひとりぼっちの淋しさを、まぎらわすためにもあかちゃんがほしい。あかちゃんができたら、作次郎といっしょに居られる、その確証がほしい春子。旭旅館の出口は、入ってくる玄関とはちがうところにあります。客がはちあわせにならないように、出口は裏口になります。作次郎が出て、春子が出た裏口の、向こうの電信柱の電球が、まわりを照らしているほかは、暗い。暗い夜道、この夜は、春子、夜の食事をとらないまま、千本通りに出るところで、作次郎と別れたのでした。












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最新更新日 2014.5.8


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