耽美試行

はなものがたり(1)-8-

 40〜45 2015.6.24〜2015.7.6

    

-40-

(8)
若い世代にも読者がいる女性誌の記事に、京都の老舗料理旅館「おち正」の記事が載りました。4ページ建ての記事で、広告料は島津財団が負担した記事広告です。若女将越智妙子の和服姿でのもてなし光景や京懐石の料理、それと島津財団のギャラリーで、日本のクリムトとも称される作風の新進作家若杉翔の作品展が企画され、モデルになった妙子の絵が紹介されています。
「そうなのよ、売れっこの若杉さん、わたし、若く描いてもらったのよ」
「たしかに、二十歳すぎ、初々しさが残った顔だねぇ」
「それで、理事長には、保証人になっていただく件、いいのかしら」
「一億というと、ちょっと大きいけど、東京勢に負けてられないからね」
「料理旅館って、若い人向きじゃないのよ、いまどき」
「でも、和食が世界文化遺産になる時代だから、改装すれば、客が来る」
木曜日の午後三時、妙子が島津幸一と会っているのは、四条小橋を下がったところにある老舗の喫茶店。薄暗いけれど高級感のある店内には、平日の、まだ真昼間、だからか客はまばらです。料理旅館おち正の収益は、年々落ち込んできていて、最盛期の半分くらいにまでになっているんです。高級ホテルとの提携で、ホテル宿泊の外人客向けに、川床を生かして和食を提供する、そのためには老朽化した建物を改築する必要がある、というもの。取引先の銀行が、融資をしてくれる、そのための連帯保証人を、島津織物と島津財団の経営者である島津に頼み込んでいるところなのです。

「うううん、それとこれは別よ、好きよ、島津せんぱい」
「そうだよな、融資とこれは別だ、そのとおりだ」
抱きあいながら、妙子と幸一が、のろけた会話を交わします。からだをまさぐりあう。ホテルの一室、ラブの時間、窓から東山の山並みが見えます。
「そうよ、ここのホテルのお客さんが、料理を食べにきてくれる」
「おち正、有名にならなくちゃ、モデルになった若女将、いいねぇ」
「いやですよぉ、そんな言い方、わたし、幸一さんだけよ」
「そうだ、おれだって、妙子、キミだけだ」
幸一の頭の中には、若き陶芸家の村上真衣の顔がちらつきます。妙子には、妙子のなかで、若杉翔の姿が見え隠れしています。
「ああん、ベッドで、しましょ、ああああん」
「そうだね、カーテン閉めて、暗くして」
ベッドのうえで裸になった妙子と幸一です。弄りあい、性器を唇で愛撫しあい、そうして交合にいたります。
「ああっ、あああっ、はぁああっ」
「うん、妙子、いいぞ、もっと、そらせ」
「はぁああ、ああん、おっきい、いいっ」
妙子は、幸一のしたで、なされるがまま、性の欲求を満たしていきます。幸一とて、妙子を手の中にして性の欲求を満たしていくのです。

-41-

交合の最初は幸一が妙子にかぶさる体位ですが、しだいに妙子が馬乗りになる体位となります。男と女が結びつく。特定の場所は持たないから、幸一と妙子は、その都度ホテルを変えていきます。
「はぁああ、幸一さぁあん、ひぃいい・・・・」
「妙子、ほうら、うえになれ、またいで、うごかせ!」
「はぁああ、ああん、はぁあああん」
カーテンを閉めたとはいっても完全遮光ではないから、薄明るいルームです。全裸になっている幸一と妙子です。ベッドのうえに幸一が仰向いて寝ています。妙子が、幸一の腰をまたぎます。またぐとき、幸一のペニスがヴァギナに埋められるよう、幸一が支え、妙子がまさぐり、先がヴァギナに埋まったことを確認して、ぶすぶすっ、妙子がまたぎきります。
「おおおおっ、妙子、おおっ、おおっ」
「はぁあああっ、幸一、幸一さぁああん」
幸一の腰をまたいだ妙子が、膝から下をシーツに着けて、太腿をひらいて、ペニスとヴァギナを密着させます。上半身は起こしたまま、幸一がその妙子の乳房に手をおいて、倒れないように支えるのです。女の箇所に挿しいれたペニスが、いきり立ちます。ビンビンになった幸一は性の快感を覚えます。ビンビンになった幸一のペニスを受け入れた妙子にも、ヴァギナの襞がこすられて、快感に誘われます。

「はぁああ、いい、いい、いいっ!」
「おおっ、妙子、いいぞ、いいぞ、もっとだ!」
「はぁああ、もっと、もっと、もっとね!」
「そうだ、もっと、もっと、もとだ!」
妙子が尻と腰、ひらいた股間を、幸一のまたいだ腰の上にすりつけます。前へすりあげ、後ろへずらし、ヴァギナの襞でペニスをこすります。
「ううううっ、ああ、おおおっ!」
「ああ、ああ、ああっ、せんぱいぃ、ああああっ!」
密着した部分が濡れそぼり、とろとろ蜜にまみれます。三十半ば、おち正の若女将、妙子の性欲が盛ってきます。とろとろ、体液が流れでてきます。幸一のペニスは、妙子の体液のまぶしをうけて、いっそうビンビンに勃起させます。どうしたわけか、幸一の脳裏に、若い真衣の顔が浮かびます。妙子には、年下の若杉翔の顔が浮かんでは消えていきます。
「あ、あ、あ、ああっ!」
「おお、おお、おおっ!」
「ひぃいい、ひぃいい、ひぃいいっ!」
妙子の顔が喜悦に歪みます。からだの芯が燃え盛り、突き上げてくる感覚に溺れます。幸一の射精がまもなくやってくるのを妙子が察知です。
「おおっ、抜く、抜く!」
幸一が、奥から突き上げてくる衝動に、妙子に尻をあげさせ、ヴァギナからペニスを抜いてしまいます。一気に射精に至る前、小休止させて持続、妙子のオーガズムを誘発させていくのです。

-42-

妊は女の方がいたすもの、と妙子は思っていて、幸一と会う時にはいつも、スキンを数個用意して、バッグにしまいこんでいます。でも、最初からスキンをつけるのではなくて、男が射精させるその前に、つけてもらう、もしくはつけてあげる。幸一のときは、つけてもらう、その方法です。
「はぁああ、ああん」
幸一の腰をまたいでいた妙子が、退いて、いったんベッドにうずくまります。幸一は無言のまま、スキンをつけて妙子の肌に軽く触れ、用意ができたと促します。妙子が、ふたたび、幸一の腰をまたぎます。またぐときに、見えなくなるペニスを握って、股間へ当てます。当てても素直にはヴァギナに挿せないので、幸一が誘導してやり、亀頭をヴァギナに挿しいれてやります。
「あっ、ああっ、ああっ!」
太腿をひろげ、おしっこ座りの格好で、腰をおろしていく妙子。ペニスが妙子の内部へ、挿入されてしまいます。
「ああん、ううっ、うううっ、ひぃいい」
「おおおっ、妙子ぉ、おおおおっ」
妙子がまたいで降ろした腰から股間を、前へ、後ろへ、ぐいぐいスライドさせます。ヴァギナの中で擦れる幸一の勃起ペニスです。ぐいぐい、ぐぐい、妙子が主役です。妙子の好みの速さと深さで、幸一は、妙子が昇っていく手助けです。

おち正若女将、素っ裸の妙子が、幸一の腰にまたがり、ずんずんとアクメに昇っていきます。
「はぁああ、あああっ、はぁああ。ああっ」
「いけ、いけ、妙子、おおっ、おおおっ!」
ベッドに仰向いている幸一も、腰を左右に、動かします。上下に動かし、ピストン運動です。
「はぁああっ、はぁああっ、ひぃいいっ!」
ぐいぐい、ぶすぶす、男のモノが女のトコロへぶすぶす、挿されては抜けます。妙子はヴァギナを突き上げられて、ずしんずしんと快感を体内に注ぎ込まれてくるんです。
「ひぃいい、ひぃいい、ひぃいいですぅ、ううううっ!」
もう、アクメに昇っていく気配、幸一のピストン運動が速さを増します。妙子は前に倒れてきて、幸一にかぶさります。妙子は、お尻を上げて幸一の腰と隙間をあけます。その隙間、幸一がペニスを突き上げる隙間です。
「ひぃいい、ひぃいい、ひぃいいいいっ」
「ほうら、ほうら、おおっ、おおっ」
妙子は、またいだ股間を幸一に、密着させてお尻を、前へ、後ろへと、ぐういぐい、こすりつけます。幸一が射精し始めます。妙子がアクメに昇っていきます。
「おおっ、おおっ、おおおおっ!」
ぴくん、ぴくん、幸一の痙攣を身に受けて、妙子がアクメに昇ってきます。
「ううううっ、ああ、ああ、ああ〜〜!」
幸一の腹のうえへからだを倒してしまう妙子。オーガズムを迎えて、昇りきって、半ば気絶状態の妙子。

-43-

終えた後、幸一がシャワーを浴び、腰を洗います。妙子は、トイレでビデを使います。濡れてべとべとになった処を、きれいにします。そうしてそれぞれに服を着て、ホテル一階のラウンジでコーヒーを飲むのです。
「それで、改築するあいだは、休業するのかな」
「いえいえ、休業なんてできないわ、三期に分けての改築よ」
「それで、繁盛すれば、いいね」
「ええ、借金、返さなくちゃ、いけないから」
大きなガラスの向こうは和風の庭で、池が施され、洗練された空気を漂わせています。妙子は、島津織物の専務であり島津財団の理事長の肩書をもつ幸一に、連帯保証を頼んでいるところです。
「そうだな、返さなくちゃいけないんだね」
幸一には、最悪の場合でも、連帯保証の責任は果たせる財力があります。それよりも本業の織物業の方が、売上、かんばしくなくて、支払いに私費を当てだしたところです。金月は五百万を私金で埋めた。今後も続くことが予想され、キャッシュフローが危ない。でも、そのことを、妙子に言うわけにはいきません。島津織物の会社代表権は父親だから、最悪のときでも父親名義の財産が当てられることになるで、自分が自己破産に追い込まれることはない、と確信している幸一です。

「月に百万の支払い、それで、何年かかって支払うのかしら、わたし、年とってしまうわ」
「十年か、いま、妙子は、36だったか、十年かぁ」
「わたし、それまで、せんぱいと、こうしていられるのかしら」
「そうだな、こういう関係で、いつまでもいきたいね」
からだが要求する性欲を、妙子は、べつに幸一でなくても満たすことができる。幸一よりも若い若杉翔が、精悍逞しくて、激しく燃えさせてくれる。としても、財力が必要な妙子には、幸一に頼るしかないのです。幸一には、若き陶芸家の真衣が忘れられない。若々しい肌、入れ具合、締まり具合、妙子と比較するわけではないけれど10歳も若い女子の魅力は、41才の幸一にとってはひとまわり以上も若い女体にあるのです。
「陶芸家の村上真衣さん、魅力的な子ですね、せんぱい、応援なさってるんでしょ」
「そうだね、なんとかデビューさせたいと、思っていてね」
「個展、してあげるんでしょ」
「そうだ、それよか、若杉君の絵、いいじゃない、妙子の好みだろ」
「恥ずかしいわ、わたしがモデルの絵のことでしょ、ちょっとエロっぽい」
妙子は、若杉翔の話がでてきて、内心、ドキドキ、関係がばれてしまわないかと、幸一との会話が上の空になっています。

-44-

(9)
料理旅館おち正の改装資金1億円の借り入れで、連帯保証人になった島津幸一には、財団とは別に織物会社を経営しているけれど、そこの資金繰りが行き詰まりつつあるのです。売り上げが伸び悩んでいるのに、経費が出ていく、経常赤字になっている状態なのです。収支が悪くて、銀行融資が受けられない現状で、不足分は私産の取り崩しです。五百万、一千万と注ぎ込んでいく残高がすでに五千万円を越えています。島津財団の事業のほうは、もともと収支が合うわけではなく、資金をつぎ込むところです。織物会社が利潤を生んで、その利潤を財団の運営資金に充てるのが、本来的な目論見でした。この目論見が、崩れ出しているのを、誰も指摘しないから、島津幸一には、切迫感がないのです。とはいっても会社と財団の運営資金不足は、月々一千万を越えていて、いずれ資金が枯渇するのです。
「だから、心配しなくったって、なんとかなっているんだから」
「とはいっても、専務、もう、限界に近いです、弁護士に相談したらどうかと」
財政担当の木村嘉一郎が幸一に進言します。
「弁護士に、相談か、倒産、ということか」
「そうですな、そいうことですな、密かに、相談を」
幸一は、初めて、胸が張り裂けるような感覚に陥ります。それは、ある日突然に表面化することですが、内密に事が運ばれなければならないからです。
「そうだな、弁護士と連絡をとってくれますか、木村さん」

幸一が気がかりになっているのは、若い陶芸家村上真衣のことです。個展をさせることも気になるところですが、どうも恋をしてしまったらしい。これまでのいくつかの、女との関係ではない気持ちに、幸一はさせられるのです。会いたい。会うための口実は、個展開催の具体的な段取りです。幸一は、真衣に会えないかと電話します。真衣は、夕方6時以降なら、会えるというので、午後6時に四条小橋の喫茶店で会うことにしました。
<会って、話しをして、それからラブホテル、真衣とはラブホテルが似合ってるかな>
こころのなかでのひとりごと。会社の運営や財団の運営で、こころが落ち込みます。動揺して、奈落の底におちたような感覚の幸一です。
<真衣を抱いたら身も心も満ちる足りる>
真衣との交情が、そのこころを救ってくれるかも知れない、と淡い期待をもちます。薄暗い喫茶店で向きあっている真衣と幸一です。
「いいえ、理事長さんは、わたしには、特別な方です」
「特別って、どういうことかなぁ、真衣さん」
「ほかの方とはちがう、なにかしら、特別なんですよ」
真衣が、幸一のまえで、このような言葉を紡いでくるからから、幸一のこころが動揺してしまうのです。特別な関係、つまりからだを交わらせる男と女の関係。真衣は、財力もある幸一に、よりかかろうとしているのです。喫茶店では、村上真衣陶芸展の日取りについて話をし、それから喫茶店を出て、四条木屋町を下がって、暗黙の了解、ラブホテルに入ります。
「はぁああ、理事長さん、わたしを、おもいっきりだいて・・・・」
真衣のことばに幸一がよしかかっていきます。抱きあい、まさぐりあい、交情のなかに埋没していきます。

-45-

まだ若い新進陶芸家の村上真衣が、島津幸一とラブホテルへ来るのは、初めてではありません。何度目になるのか、愛の時間は限られているけれど、その時間の中で、真衣はからだの満足だけではなくて、こころの満足も得られているようにも思えています。年下の大学院生大野健一とも交情してきました。たしかに健一のほうが、激しくて、連続する回数も多くて、真衣はへとへとにされてしまうのですが、こころまで癒されるということではありませんでした。その点でいうと、島津幸一との交情は、健一ほど激しくはないけれど、たっぷり、徐々に昇らせてもらえて、からだの満足に加えてなにかしらの安心感が得られるのです。頼れる人、40を過ぎた男に、真衣は、大人を感じるのです。
「ああっ、あああっ、理事長さまぁ」
「ほうら、真衣、おおっ、いいねぇ、真衣」
「はぁああ、ああん、だめ、だめ、あああん」
ベッドの縁に手を着いている真衣をうしろから、幸一が抱いてきます。抱いてくるといっても、お尻を突き上げ、膝を伸ばしたまま、太腿をひろげている真衣の腰を両側から抱いていて、ヴァギナにペニスを挿しこまれているのです。幸一は立ったまま、勃起させたペニスを、真衣のなかに挿しこんで、ぐいぐいと腰をひねります。真衣が悶えます。喜悦の声を洩らします。感じている真衣を、幸一のこころが捉えます。からだの満足以上に、女としての真衣の身悶えに、こころを奪われていくのです。

バックスタイルから、向きあい抱きあい結合するスタイルへ。ベッドのうえで幸一が、足をなげだし折り曲げて、そこへ真衣がお尻を落とし、股間を密着させてしまいます。抱擁しあっての結合です。
「はぁああ、いい、いい、いい・・・・」
「いいのか、真衣、いいのかい」
「いいです、いいです、理事長さま」
真衣の股間へペニスを挿しこみ、きっちりと密着させている幸一と真衣です。男と女が密着し、こころとこころを伝導させるのです。
「はぁああ、ひぃいい、ひぃいいですぅ、ううっ」
「いいのか、いいのか、真衣、いいのかい」
幸一が腰を揺すります。幸一の太腿にまたがった真衣が、腰を揺すります。腰を揺すりあう幸一と真衣です。密着したペニスが、真衣のヴァギナの襞をこすります。真衣の満足汁が汲みだされ、密着部分が、ぬるぬる、とろとろ、です。真衣が汲みだす満足汁が、滴りでてきます。ベッドのシーツが濡れそぼります。抱きあいます。幸一が真衣を背中から抱きしめます。真衣が幸一の腕にしがみつき、からだを密着させます。幸一のこころが、この世を忘却します。真衣のこころが、この世を享受します。ふたりが結ばれ、ふたりが至福の時を過ごします。幸一には、もう全てをなくしても、真衣だけを抱いていたい、と思うのです。
(おわり)









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最新更新日 2015.7.13


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