耽美試行

はなものがたり(1)-7-

 35〜39 2015.6.1〜2015.6.22

    

-35-

(7)
島津財団の島津幸一理事長から、村上真衣に個展のための作品選びを行ないたいとのメールが入ったのが6月の初めです。陶芸作家を目指している真衣にとって、財団が陶芸展を企画してもらえるというのは、いよいよ作家としてのスタートです。財団の応接室へ、真衣を迎いいれる島津幸一は、黒地のスーツ姿です。真衣は水色のワンピース姿、髪の毛はポニーテール、清楚な装いです。
「村上真衣さん、九月の第二週から、二週間の企画で、開催する予定だ」
「そうですか、あと三ヶ月、未発表のもの、新柄で制作します」
「雑誌にも、記事広告で出すから、反響が楽しみだよ」
「なにもかも、お世話になって、ありがとうございます」
真衣には、求められれば従おうと思う気持ちをもって、この場に及んでいます。すでに、からだを求められて、許してしまった関係です。もう真衣にとって、他人とは思えない島津理事長です。応接室で見るスーツ姿の島津を、真衣は他人とは思えないとはいっても、なんだか遠い存在のようにも思えていて、距離を測りかねます。
「夜の食事をしながら、打ち合わせをしましょう」
島津幸一の気持ちは、真衣に傾いています。どうしたはずみか、恋心を持ってしまって、求めている自分を意識する幸一です。告白はしなくても、その意は伝わると思っていて、すでに真衣がからだの関係をしてくれたのは、好意をもっていてくれているから、との思いです。
「七時だというのに、まだ明るいねぇ」
先斗町の鴨川べりにある料理旅館、床での食事です。おち正を使うわけにはいかない、と幸一は思う。おち正の女将妙子とは、大学の先輩後輩の関係、密接男女の関係、そんな妙子が経営する料亭を使うわけにはいきません。

「それじゃ、乾杯だ、真衣さんの前途を祝して!」
ふたりだけの、テーブルを介して、座布団に座っての乾杯は生ビールです。床は納涼、リーズナブルな料金建てで、この店は若い男女で混みあっています。幸一はウナギがメインの料理で六品。真衣は、魚より肉が好きなので、牛肉を焼いてもらって六品。
「陶芸の道って、なかなか険しいとは思うけど、援助するよ」
「はい、光栄です、わたし、きっとデビューしてみせます」
「そうだね、まだ若い、ぼくは、真衣さんに惚れたんだな」
真衣に傾斜していく幸一は、すでに恋するというレベルを越えて、真衣の存在が心の深くに滲みこんでいるのです。真衣には、個展を開催してもらえるという、思い余るご褒美に、その代償を支払っても十分にその値打ちがあると思います。40才を越えた島津幸一を、恋の対象としてより、パトロンとしての父親、とでもいった感覚です。年下の大学院生大野健一との関係を終わらせたのも、その背景に、島津幸一の存在があったからです。
「うんうん、四条木屋町をさがったところの、あそこがいいね」
「いやだぁ、理事長さん、わたし、だめですよ、今夜はぁ」
本音ではない真衣の言葉に、幸一は、ためらう気持ちを隠せません。その幸一の顔を見る真衣は、にっこり笑って、幸一に、安心してよ、との合図をだしたつもりです。男と女のあいだ、本音はなかなか伝わりません。やはり、まわり回ってでも言葉で確認しなければ、いけません。
「だめってゆうのは、危険だからかね」
「そうね、危険日よ、わたし、だから、こわい」
「なら、だじょうぶ、ぼくのほうでコントロールする」
ヒソヒソ話です。セックスの場面を、真衣も幸一も想像していて、その交わりをどうするか、いいえ、避妊をどうするかという問題です。高瀬川沿いのラブホテルへ入ったのは午後九時になるかならないかの時間でした。

-36-

好きあうからこそ、ラブホテルへ男と女です。幸一が真衣を好きになったのは、その清楚な感じの陶芸家、というイメージでした。次第にこの真衣の振る舞いに気持ちを傾斜させてきて、関係を持ちたいと思うようになって、関係が持てたのち、ますますこの女のことが気にかかってきたのです。陶芸家を目指している真衣に、援助をしてやらなければならない。援助とは、資金援助のことです。秋に予定している真衣の個展。その費用と生活にかかる費用のいっさいの資金を、面倒みようと思うのです。真衣にしてみれば願ってもない話ではあるけれど、それなりの遠慮という気持ちもあって、全部をすんなりと受け入れるわけにはいかない。
「はぁあ、ああん、理事長さまぁ、あああん・・・・」
立ったまま抱きあって、ワンピースのすそからめくられていく真衣。水色のワンピースを脱がされてしまうと、ブラトップのインナーにショーツ、ストッキング、抱かれて、キッスするまま、幸一がズボンのベルトを外してきます。
「真衣さん、いい匂いだ、やわらかい・・・・」
「ああっ、理事長さまぁ、はぁああっ・・・・」
唇を解かれ、首筋から耳うしろへ指がまわされ、髪の生え際を愛撫される真衣。ネクタイを外され、カッターシャツのボタンが外され、シャツ姿になった幸一の胸へ、真衣のブラトップの胸があたります。男と女。立ったまままさぐりあいます。おもにまさぐられるのは真衣です。ひとまわり以上も年上の幸一から、インナーのなかへ手を入れられ、直接、肌に触れられてきます。
「ううっ、ふぅうう、ふぅううううっ・・・・」
うっとり、ブラトップのすそから入れられた幸一の右手が、直接に、乳房にかぶせられてきます。軽く乳首に触れられてきます。
「はぁああっ、ああっ、ああん・・・・」
立っているのが少し辛い。幸一に抱かれて支えられているとはいっても、足で立っているから、からだから力を抜けない。乳房をまさぐられながら、唇が重ねられ、ストッキングを穿いた腰うしろから、左手を入れられてしまう真衣です。

男の手の中にはまってしまう25才の女、真衣。
「ふぅうう、すぅううう、ふぅうう、すぅううう・・・・」
幸一は無言です。唇と、右手と左手を、巧みに使って、真衣の感じる処を、なぶっていきます。
「はぁあ、ああっ、理事長さまぁ、ああっ!」
ストッキングとショーツが、お尻を抜かれて、太腿の根元まで降ろされてしまった真衣。幸一は、乳房をまさぐっていた右手を、腕ごと真衣の背中へまわし、左手を降ろして露出させた股間のまわりを愛撫してやります。陰毛を撫ぜてやります。立ったままの真衣が、からだの力を抜いてきます。崩れそうになる真衣を、抱いている背中にまわした右腕で支えます。そうして、陰毛から降ろした左手を股間へとさしこむのです。
「ふぅううう、うう、ううっ」
手の平を上にして、閉じたままの股間へさしいれる幸一。唇を重ねたまま、真衣の股間の柔らかい唇に手をかぶせます。
「ああっ、はぁああっ」
股間に手をさしいれられた真衣。キッスを解いた幸一が、ブラトップを脱がせてしまい、露出した乳首を唇に挟みます。立ったままの真衣、立ってられない、立っているのが辛い、このラブホテルへ入ってまだ10分も過ぎたか過ぎないかなのに、もう佳境にはいろうとしているんです。
「理事長さまぁ、ああん、だめ、だめ、あああん」
股間にハメられた手の平、手の指が、陰唇まわりをまさぐられてきます。唇にはさまれてもぐもぐされる乳首への刺激が、真衣にはやわらかな開放につながっていきます。幸一は無言のまま、真衣を愛撫し、真衣の足元が、おぼつかなくなっているので、抱いたまま、後ずさりさせ、肘掛椅子に座らせます。座った真衣の前に立ったままの幸一です。幸一は、真衣の顔を、まだブリーフを着けたままの腰へ、当てさせるのです。

-37-

好きになった幸一の腰のモノを、唇に咥え、口の中に含むことは、真衣にとって、抵抗はありません。幸一にまさぐられ、肘掛椅子に座らせてもらって、前に立った幸一の腰のモノ、根元を右手で軽く握り、頭のところを唇にはさみます。柔らかい幸一の感触が、唇から伝わってきます。
「ふうう、ふうう・・・・」
唇に挟んだ頭を口の中へと挿しこむ真衣。幸一が頭のうしろに手を置いてきて、頭を抱かれてしまって、口には幸一のモノを咥えているのです。
「ほうら、真衣さん、ほうら、咥えて、締めて」
「ふうう、ふうう、すううう・・・・」
幸一が言うがままに、真衣が行為していきます。咥えて、口の中に含み入れ、ぎゅっと絞っていきます。絞ったまま引き抜いて、握った胴体を唇に挟むんです。唇をその茎にスライドさせます。ハモニカ吹くようにスライドさせるのです。そうすると、幸一のモノが、ビンビンに硬くなってしまうのです。
「おお、真衣さん、しごいて、そのまま、しごいて」
ビンビンに硬くなった男根の陰茎を握った真衣に、手を上下に動かすようにというのです。真衣が、幸一の腰の勃起ブツを見つめます。自分にはないモノだから、興味津々、握ってしごきながら見つめます。
「はぁああ、かたい、おっきい、はぁああ・・・・」
真衣が着けたブラトップを脱がしてしまう幸一。ストッキングとショーツが、太腿の中ほどで留まっているのを、膝のしたへと降ろしてやります。ほぼ全裸となった真衣。25才陶芸家真衣の裸です。

細身でも乳房と臀部は膨らんでいる真衣。色白ですが艶があります。肌が張っています。
「ああっ、理事長さまぁ、ああっ」
幸一がひざまずき、真衣の足首を持ってストッキングとショーツを脱がしてしまったのです。全裸にされた真衣の膝が持ち上げられ、肘掛椅子の肘掛にひろげられてしまったのです。
「はぁああ、あああん、理事長さまぁ」
「ほうら、真衣さん、丸出しだ、ほうら」
「ああん、ああっ、理事長さまぁ、あっああん」
肘掛けにひろげてのせられた真衣の膝。股間を開かせた座部に幸一が、腰のモノを真衣に挿しこみながら座り込みます。
「おおっ、真衣さん、おおっ!」
密着していく幸一と真衣。腰の勃起ブツが真衣の股間に埋め込まれてしまいます。幸一があらためて上半身を裸にして全裸。真衣と幸一が共に全裸です。
「ああっ、ひぃいいっ、あああん」
「ううっ、真衣さん、いい、いい、いいねぇ!」
ぐいぐいと、真衣の股間に密着させた幸一の、その腰が動かされます。
「ああっ、はぁああっ、はぁあああっ」
動かされるたびに真衣のなかがこすられるのです。男と女のサカリです。密着させられた男と女です。
「ほうら、真衣さん、いいんだろ、ほうら、ほうら」
「はぁああ、ひぃいい、ひぃいい、うぐううっ、ううっ」
性器を密着されたまま、真衣は、幸一の左腕に抱かれます。唇を重ねられ、右手で乳房をまさぐられるのです。

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ベッドに仰向いて膝をひろげた全裸の真衣。真衣の太腿のあいだに、幸一がお尻をついて膝を立て、足をひろげます。全裸の真衣を起こします。起こして抱きます。抱くときに、腰の勃起ブツを真衣のヴァギナに埋め込みます。密着させて、抱きあうのです。
「はぁああっ、理事長さまぁ、ああっ、はぁああっ」
若き陶芸家真衣の口から、木漏れ日のような息が洩れてきます。抱きあう幸一には、手の中にいる真衣が、こころを締めつけてきます。40を過ぎた幸一には、密着させた勃起ブツが、からだの快楽を満たせていくのとは裏腹に、真衣が、どうしようもなく奈落へと、落としめてくるような気持ちにさせるのです。
「真衣さん、うっ、うぅ、まい、すきだ、好きだよ」
幸一がすがりつくとでもいうように、真衣に埋没し、愛撫し、唇をふれさせ、耳元でささやきます。
「はぁあ、ああっ、理事長さまぁ、わたし、ああっ」
「どうした、どうしたの、真衣、どうした?」
「なんにも、どうもしてない、ああっ、はぁああっ」
男のモノが女のなかで密着されたふたりです。からだの芯が疼く真衣。からだのなかがうずうずする幸一。なにより、抱きあって、からだの表面をまさぐりあうことで、こころとこころが通いあう。
「おおっ、真衣、きもち、いいよ、気持ちいい」
「はぁああっ、うち、うち、いい、いい、いいですぅ」
真衣が、幸一にしがみついてきます。そうして後ろ倒れようとします。幸一がお尻をあげ、密着のまま仰向いた真衣にかぶさっていきます。

ベッドに仰向いて、太腿をひろげ、膝を立てる新進陶芸家の村上真衣。その真衣におおいかぶさるのは、若い芸術家を支援する島津財団の理事長島津幸一です。支援するかわりにからだを求めるといったことではなくて、すでに幸一には、現実からの逃げ道として、真衣を求める、真衣のこころを求めるのです。信仰の対象として真衣を崇める、とでもいう気持ちで、セックスは穢れではなくて、聖なる行為として幸一は無意識にとらえているかのようです。
「はぁああ、ああっ、ひぃいい、ひぃいい」
「ううっ、おおっ、ううっ、ああっ」
太腿をひろげた真衣の尻に、枕を重ねて敷いてやり、尻を高くして挿入させた勃起ブツを、挿して抜き、挿して抜き、を繰り返します。
「はぁあ、ああっ、ひぃいいっ、ひぃいいっ」
「おお、おお、いいっ、ほうら、真衣」
「はぁああ、理事長さまぁ、ああっ」
「いいね、いいね、おおおっ、いいねぇ」
「いい、いい、いいですぅ」
「いいか、いいのか、いいのかい」
「ああっ、もっと、もっと、もっとぉ」
真衣が、幸一の胸のなかで、悶え呻きます。幸一にはこの真衣の、この洩れる声で痺れます。そうして二人がいっしょになって、快楽の頂上へと昇っていくのです。

-39-

「ううっ、ううううっ、はぁああっ!」
ベッドに仰向いて股間をひろげきった真衣が、幸一のしたでオーガズムを迎えていきます。
「おおっ、ううっ、おおおおっ」
「はぁああ、ああん、ひぃいい、いいっ!」
「おお、おお、真衣、おお、おおっ!」
幸一の射精がはじまります。スキンをかぶせたペニスです。
「はぁああ、いいっ、いいっ、いいいい〜〜〜っ!」
昇り始めた真衣には、ナマのモノとかわらない、そのままぐんぐん、大きな波にのまれていきます。
「おおおっっっっ、ああっ!」
ぴしゅん、ぴしゅん、ぴくん、ぴくん、根元まで挿入されたペニスが、痙攣する刺激で、真衣がいっそうの高みに登りつめ、からだを硬直させて昇天していきます。
「ああああ〜〜〜!」
甲高い大きな声で、呻き悶えて叫ぶ真衣の声。オーガズムに達していって、そのままぐったり、からだの力を抜いてしまった真衣。
「おお、おお、まい、おおおおっ」
射精を終えて、挿しこんだそのままで、仰向いて股間をひろげた真衣を抱く幸一です。満たされた、共有したようにも思える気持ち。まるで観音菩薩のようにも見える真衣の素直な顔立ち。萎えてしまうまで挿入している幸一には、それが愛の証、恋の虜になってしまうのです。

「ううん、理事長さん、わたし、結婚したい・・・・」
「真衣さん、ぼくと、結婚したいって?」
「そうです、理事長さん、わたし、奥様になりたい」
「うううううん、それは、いまは、無理だよ」
「どうしてですか、どうして無理なのですか」
真衣は、本気ではなくて、幸一にカマ掛けて、その気持ちを確かめようとしているのです。からだを交えた関係。年下の学生を相手にするよりも、この人を相手にしたほうが、得策。それよりも親密になればなるほど、幸一の憂えた感覚が、麻衣の胸に迫ってくるのです。
「個展、成功させよう、それが当面の課題だね」
「ありがとうございます、成功させたいわ、わたし」
「大丈夫だよ、ちゃんとした批評家もつけるから」
「理事長さんの力ですね、そうなんですよね」
下着をつけおえ、水色のワンピースを着た真衣が、乱れた髪の毛を両手で束ね、ポニーテールにしていきます。夜が更けても高瀬川沿いの店からは、サラリーマン風の男客が、店の女に見送られ、タクシーに乗っていくのが見えます。真衣が幸一と別れたのは四条木屋町の路上、もう終バスも無くなった時間でした。











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最新更新日 2015.6.9


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