京子が、かすかに、息が擦れるような声を洩らしたのを、誠二が感じます。ピンク色のセーターに茶色のスカートを着た京子を、誠二は初めて感じる女子として、意識します。生足の膝が、生々しく思えて、からだの芯にズキズキっと痺れが走る感覚です。京子から手を離す誠二。男のモノがむっくりとしてきて、からだの変調がわかります。これ以上、誠二と京子の間には、なにも起こらなかったこの日です。
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誠二は18歳の誕生日を迎えて、見習いで勤めだしたモータースの好意で、普通運転免許を取るために教習所へ通わせてもらえるようになりました。教習所の費用は、モータースの社長から出してもらえることになりました。そのかわりの条件として、三年間は自分の整備工場で働いてほしい、とうことです。誠二は、それほど深く考えることもなく、その条件に了解して、免許取りの便宜をはかってもらえることになったのです。平日の昼間に二時間を免許証を取るための自動車学校へ通います。単車の免許は16歳になったところでもらったから、誠二には自動車免許へのバージョンアップです。
「そうなんよ、免許取りに、四条の教習所へいくんだ」
「そうなの、よかったわね、仕事にも使えるのよ、ねぇ」
誠二の報告に、京子は笑顔で応えてきます。京子は、誕生月が四月なので、高校生になるとすぐに19歳になりますが、誠二が18歳で三年生になりますから、先輩です。梅の季節が終わって、桜の季節になるころ、四月になるところです。日曜日の午前に京子が春秋荘にやってきて、お昼ご飯をつくって一緒に食べます。簡単な調理しかできないタオルをひろげたほどの狭いキッチンですが、京子はうれしくてたまらないといった風に振る舞うのです。スラックス姿、上はブラウスにピンクのカーディガンを羽織った京子です。
「フライパンでお肉を、お醤油とお砂糖とお水で炊いて、卵をまぶして、お肉丼よ」
京子が料理をしている間、誠二は京子の横に立って、じっと料理される様子を見ます。じゅじゅじゅじゅっとフライパンのなかで細切れの肉が焼けてきて、お砂糖をいれ、お水を少しいれ、そのうえからお醤油をいれる京子の手先を、誠二はじっと見ています。
「いい匂いしてくる、美味しそう、おれ、肉、好きやねん」
155pの京子に、誠二は165pだから、少し誠二の方が背が高くて、手元を見下ろすかっこうです。京子の華奢でほの白い手の指先を、誠二が見守ります。手際よくフライパンを動かしながら、調理していく京子を、誠二は、食べてしまいたいほどの衝動に駆られます。
「もうご飯炊けるでしょ、そしたら、卵かけ牛丼にするのよ、美味しいよ、きっと」
「腹減ってきたよ、京子がつくるご飯だから、美味しいやろなぁ」
「誠二くん、自動車の整備士さんより、お料理の調理師さんになったら、いいのに」
手際よくフライパンをあやつりながら、京子は、誠二にアドバイスです。誠二は、成り行き任せで自動車整備の道へはいってきたけれど、料理の調理師になるなんて思いもよらないことでした。卵かけ牛丼が出来上がって、ホームコタツのテーブルに丼をおいて、食べ始めます。
「美味しい、おれ、好きやわぁ、京子、料理、うまいんやから」
ぱくぱく、誠二は、まるで餓鬼のように、丼鉢に入った牛丼を、食べるのです。
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京子が作った牛丼を食べ終わると、京子がお茶を入れてくれます。お茶とはいっても上等ではないけれど、緑茶です。茶葉を急須にいれ、電熱器で沸かした薬缶のお湯を、注いでしばらく待ちます。
「うん、誠二くんのよこに、入れて」
ホームコタツで、誠二の横に並ぶというのです。レコードのジャケットを、一緒に見るためです。ポータブルラジオからショパンのピアノ曲が流れていて、LPジャケットに載っている解説とか、曲目とか、演奏者のピアニストのこととか、輸入盤なのに、日本語で書かれてあるのです。急須を持った京子が、湯飲み茶わんに注ぎます。
「お茶、入ったよ、飲みましょ」
「うん、飲もう、丼食って、喉、乾いたわ」
京子が横にきて、お茶を入れてくれて、誠二は茶碗を手に持って、唇に運んで、ずるずるっと啜ります。京子は、自分の分を茶碗に入れて、そのまま手をつけません。急須をコタツのうえに置き、レコードのジャケットを茶碗の向こうに置いてしまいます。
「ねぇ、誠二くん、わたし、ねぇ、いいこと、してあげる」
小さな声で、京子が誠二に聞こえるか聞こえないかわからないほどに小声で、疼くように言いながら、左側にいる誠二の太腿へ、京子が左の手を置いてくるのです。誠二は、それでなくても、真近にいる京子の匂いを感じて、うずうずしてきているところでした。
「ううん、ああ、京子、なにするん」
三畳の間、ホームコタツで、窓に向かって並んで座った誠二と京子です。布団は三つ折りにして積んであり、昼間はホームコタツにしてある誠二の部屋です。ホームコタツの布団が被っているから、京子の手は、誠二には見えません。でもうずうず、ズボンの上からだけど、手を当ててきて、ズボンのジッパーを降ろしだした京子なのです。誠二は、むしろなされるがまま、京子の顔をちらっと見ると、京子は、放心したような表情で、ほわっと美しく見えます。
「じっとしていてね、誠二くん、いいことしてあげるんだから、ね」
誠二は、京子がジッパーを降ろしたズボンの中へ、左手を入れてきて、パンツの中へ侵入させ、男のモノを握ってきたのです。男のモノは硬くなっていて、誠二は、ぐっとこらえる気持ちで、京子にされるがままになります。ラジオからかすれたピアノの音が流れています。誠二はもう上の空で、ピアノの音なんて耳に入りません。
「ああっ、ああっ」
京子が、パンツの真ん中から、硬くなった男のモノを、抜きだしてしまって、起こしてしまったのです。ホームコタツの布団をめくってしまう京子。足をひし形にした誠二の真ん中から、ナマ肌色の男のモノがにょきっと起ってしまって、京子が手を離したのです。
「ねぇ、誠二くん、バンド、はずしあげる、ええっ?、恥ずかしい?」
「ううん、ちゃう、恥ずかしくなんてないけど、ううっ」
ズボンとパンツを、いっしょに太腿の根元にまで、下ろされてしまう誠二。ピンピンの男のモノが剥き出しになって起っているのを、京子が握ってしまうのです。
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誠二の部屋は三畳の広さです。日曜日のお昼を京子と一緒に食べたあとのことです。誠二には予期せぬことが起こってきたのです。一つ年上の京子が、誠二の性器を弄ってきたのです。ホームコタツに足を入れ、温かくなった下半身です。コタツには薄い布団がかかっています。京子はその布団をめくりあげ、ズボンとパンツを太腿にまで下ろさせた誠二のモノを握ってしまったのです。
「ああっ、ううっ、京子、ああっ」
誠二は、こんなこと、初めてのことです。勃起してしまったモノを、女子に握られるなんて、それも京子に握られてしまうとは、思いもよりませんでした。京子は、無言で、左手で誠二のモノを根元から軽く握ってきて、右手で誠二の左手首を持ったのです。
「ううん、誠二くん、いいよね、ふぅううん」
甘えるような小声で、京子はつぶやき、誠二の左手を、ピンク色のふわふわセーターの胸に当てさせたのです。スラックスを穿いた京子は、誠二の右横に足を崩して座っています。
「ああっ、どうするん、京子、おれ、だめだよ」
面食らっている誠二に、京子は諭すように無言で、セーターのうえから胸を触らせるのです。そうして、京子は空いている右手でセーターを、裾からめくりあげ、スリップとブラジャーの中へ、誠二の左手を導きいれます。
「ねぇ、誠二くん、背中のホック、外して、おねがい」
京子は前のめりになり、誠二にブラジャーのホックを外してほしいというのです。誠二には要領がわからないから、戸惑ます。誠二は前のめりになった京子の腹のところからスリップの内側に手をいれ、背中へまわして、ブラのホックを外します。京子の顔が、誠二の胸元にきます。誠二の左手を胸に入れられた京子が、誠二へ寄ってきます。左手には誠二の勃起したモノを握ったままで、右手で誠二の肩を抱いてきます。誠二の左手を胸に当てさせたまま、京子が上半身を揺するのです。
「はぁああっ、誠二くん、いいこと、おっぱい、揉んでほしい」
京子の声は羞恥に満ちていています。女子のことには未熟な誠二には、まもなく19歳になる女子の、気持ちがわからないのです。誠二は、女子の乳房をさわるのは、初めてです。想像はするけれど、誠二に女子との交渉経験はありません。京子の乳房は、柔らかくて温かい感触です。
「ああっ、ううっ、うっ、うっ、ああっ」
思い余って、勃起するモノを握られている誠二が、もよおしてきて、射精してしまったのです。そういえば、京子が、微妙に、握った誠二のモノをしごいていたのです。京子は、あっけなく、誠二が射精してしまったのを、手を皿にして受けとめ、そばにあったタオルで拭いたのでした。