物語と小説のブログから


愛の夢-6-

 41〜42 2018.11.18〜2018.11.21

-41-
 全裸で立ったままの可奈を抱く全裸の隆だ。六畳の広さの洋間で、シングルベッドと肘掛椅子が置かれている。木製の長方形テーブルがあり皮製の小型のトランクが置かれている。天井から棒状のブランコが降ろされ、隆に抱かれた可奈が手首を括られブランコの棒を握らされる。可奈は手をひろげ、頭の上にあげさされる。、
「はぁああん、なによ、なによ、なにするん、こんなかっこう」
可奈が鼻にかかった甘える声を洩らす。立って手をあげた全裸の可奈は、トロンとした目を隆に向ける。
「ああん、手がおろせない、降ろせないよぉ」
可奈が言うように、頭上のブランコ状の棒を握らされて、腕が降ろせないようにされたのだ。
「オレ、可奈の裸を見たいんだ、素っ裸の可奈を、だよ」
可奈の前から一歩引いて立った隆が、可奈の顔から、目線を降ろして足首までを観察する。可奈は全裸を隠すことも出来ずに放置されたまま、隆の目線に晒されている。隆が手を伸ばし、可奈の乳房を裾から揺すり上げる。ぷるんぷるん、左右の手の平を内側に向けられ、人差し指で揺するられる可奈。
「ああん、いやん、いやだってばぁ、ああん」
「柔らかいね、可奈、おまえの裸、触りたかったんだ」
隆は右手を降ろし、可奈の恥骨のうえに当て、黒毛を包み込み、下に向けた中指の先を股に入れ込んでいく。可奈のまだ隠されている箇所の感触を言っているのだ。
「ああん、だめ、だめ、ああん、だめよぉ」
酔いが醒めてきたのか、可奈の声がはっきりしてきて、太腿をぴったしと閉じてしまう。隆は左手を可奈の肩に置き、右手を股のなかに挿しこみ、キッスを求める。可奈は、手を使えないから、半ば、立ったままの全裸は、隆の手で、なされるがままだ。可奈の後ろに肘掛椅子を持ってくる全裸の隆。可奈の頭上のブランコを降ろして、膝をまたがらせてしまう。可奈は、膝をひろげて持ち上げられた格好にされてしまう。
「いやよ、こんなの、わたし、ああん、やめて、ほどいて、ああん」
股をひろげられたその前に立つ隆に、可奈は、哀し気な目線で、声を洩らししまう。思いがけないやられ方だ。可奈はノーマルな女子だ。それに対して隆は、女を拘束して興奮するタイプの男だ。
「オレ、可奈を、こんな格好にして、セックスしたいんだよなぁ」
可奈がお尻を置いている肘掛椅子の前にしゃがみこむ隆だ。可奈の広げて持ち上げた太腿の根元に顔を当てる隆。舌を出し、可奈の柔らかい縦唇に舌を当て、啜りあげる。可奈は、その舐められる感触に、得体の知れないムズムズ感を覚えてしまう。窮屈だが痛くはない。苦痛というより屈辱感だ。女がひろげられ、男になめられる感覚に、しだいにはまりこんでいく大学生の可奈だ。

-42-
 志保が伏見の実家へ帰ってきたのは、もう昼を過ぎていた。友達の可奈と一緒にドライブに行った後、六甲の別荘でバーベキュー、酔わされて男たちと一夜を明かした。神戸で別れたあと、行く当てもなく電車を乗り継ぎ、実家に来たのだった。ママが迎えてくれたが、お風呂に入り、高校卒業まで使っていた部屋に入った。庭に続く掃き出し窓から、明るい光が射しこんでいる。部屋の真ん中には黒塗りのグランドピアノが置かれている。高校生の頃には、音楽の道へ行こうかとも迷ったが、私学の社会学部へ入学した。実家を離れてワンルームで独り暮らしを始めた志保だった。
「ママ、夜、なにするん」
「志保ちゃんの、好きなの、してあげるよ」
「そうなの、じゃ、ママのオムライス、食べたい」
「はいはい、作ってあげますよ、ゆっくり、していきなさい」
一人になって、ピアノの蓋を開ける志保。椅子に座って、赤いフェルトを退けて目を落とすと、白い鍵盤に黒い鍵盤が目の前になる。
「弾いてみよう、愛の夢、難しいかなぁ」
前に買った楽譜はテーブルの横の書棚にしまってある。その前に、右の中指で鍵盤をコンコン叩いてみる。鍵盤の真ん中のドの音だ。それから、五本の指を使って、音階を弾いてみる。懐かしい音。志保は左手も使いだして、ハノンの教則本からの運指を始めだした。
<なつかしい、うんうん、ああ、指、動かないわ、なつかしい>
練習に励んでいた頃の自分を思い出しながら、最近起こったことが、思い出されてくる。カメラマンの男性と知り合い、南森町のスタジオでモデル撮影された。男を経験した。昨日の出来事は、いまとなっては過去だけど、まだ終わったばかりで、複数の男と交わった記憶は生々しい。
<どうしよう、これから、可奈、どないしてるの、わたし、ここにいるよ>
愛の夢の楽譜をピアノの前にひろげ、練習しようと思う志保。高校生の時に着ていた赤いチェック柄のワンピースを着た。お風呂上がりでインナーはブラとショーツだけ、それにワンピースだ。寒くなってきたので部屋に備え付けのガスストーブのスイッチを入れた。ピアノを弾き出すが、楽譜を読むところから始めなければいけない。次第に音符の中に没頭しはじめる志保。久しぶりのピアノ弾きだ。思うようにはいかない。
<愛の夢、リストの作曲よ、弾きたい、弾いてみよう>
志保は、グランドピアノの音の中に没頭しだした。曲の冒頭から少しだけ、ゆっくり、ゆっくり、指を確かめながら、かって新しい曲をマスターするときの要領を思い起こしながら、ゆっくり、ゆっくり、自分の部屋で練習を始めた。心斎橋の楽器店でこの楽譜を買ったのが夏の終わりだ。そのときに知り合ったカメラマンの向井啓介の顔が、志保の脳裏に浮かんでは消えた。会いたい衝動は起こらなかった。昨日の男たちの顔が浮かぶが、消えていく。早い夜のご飯に、キッチンでひとりオムライスを食べるまでの三時間、志保はピアノを弾くことに没頭していった。
(終わり)


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最新更新日 2018.11.26


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