耽美試行

花舞-2-

 6〜10 2016.5.2〜2016.5.19

    

2-1-

由岐康夫は、由岐織物株式会社の御曹司です。代々西陣織の生産を扱う会社で、生産から問屋までを営んでいます。織物工場は現在廃業した状態で、高級な商品価値の高い着物地、反物や帯を扱う商社機能だけが経営されているところです。それなりの資産があるから、当分、食うに困るということはないとしても、将来において由岐織物株式会社を持続させるかどうかは、未知数だ、とまだ若い二十八歳の康夫は思うのです。美佐子との出会いは、偶然とは言え、好きなタイプの女子で、ほぼ一目惚れといった感じで、見そめたものでした。
「ううん、わたし、由岐さんのこと、嫌いじゃありませんでしたから」
「でも、好きじゃない、というのかな」
「うううん、そうじゃありません、わたし、あまり燃えないたちなので」
「それは、冷静、っていうことだから、いいんじゃないですか」
すでに関係を結んでしまった間柄、二十五歳を越えてしまった美佐子と二十八歳の康夫です。二三年交際したあとには結婚する、ということもあり得る関係、むしろその公算の方が強いとおもわれます。男と女、からだを交じり合わせた関係というのは、お互いにそのことを意識していたことでした。

寺町の三条をあがったところにスマートという老舗の喫茶店があります。美佐子とはこの喫茶店で待ち合わせをしていたのです。この界隈は京都の老舗が多いところで、康夫の趣味として芸術書や美術品を扱う店をもちたいと思っているところ、美佐子にその話を持ちかけたところです。
「マンションのフロアーを改造して、どちらかといえばシュールリアリズムを専門に扱いたい」
「そのマンションを、見に行くんですか」
「そうだよ、見てみたい、向井さんといっしょに」
「ええっ、どうして?、わたしと?、なのですか」
「なんとなく、知ってもらいたいと思って」
康夫は心細い気持ちで、美佐子となら、なんとかやっていけそうな気がしているんです。美佐子に対する恋心とでもいえばいいのか、大きな投資だから、芸大を卒業してきた美佐子には、理解してもらえるのではないかと思うのです。それに、その店の切り盛りを美佐子にゆだねてもいいのではないか、との思いもあります。
「五千万くらいなら、父の信用で借りられそうなんだ」
「わたしには、わからないわ、でも、興味あるな、わたし」
向井美佐子は小顔で華奢な感じに見える二十五歳越えの女子です。でも、外見からは想像できないくらいふくよかなからだをもった女子だ、と康夫は、美佐子の裸体を思い起こしながら、顔を見ては、言葉を紡ぐのです。

2-2-

寺町よりも一筋西の通りにあるマンションの一室が、康夫がいう物件です。エレベーターで五階まであがって、すぐのところが物件。金属の扉になっていて、外から内部は見えません、マンションつくりです。マンションの入り口には不動産屋の社員が待っていて、スーツ姿の30前くらいの男に案内されるのです。
「ええ、改造すれば、いいかと思いますよ」
「60平米のワンルーム、いい物件だとは思うんだ」
社員の男と会話する由岐康夫の表情を見ている美佐子には、目が輝いているようにも思えて、素敵だと思う反面少し怖いような気持にもなってきたのです。金額は五千万円だといったが、それは大丈夫なのか。美佐子の年収にしてみればその金額は20年分に相当します。
「そうだね、アンティークな洋室にして、密室の感じで」
「場所もいいですし、五階正面ですから、お忍びでもいいですよ」
「そうだね、銀行ローンは、大丈夫なんだろうね」
「信用調査では、由岐織物さんなら、大丈夫、との答えです」
「そうか、それなら、決めるのがいいな、ここに」
「ありがとうございます」
不動産屋の若い社員は、康夫に深い礼をして売買成立に至ったことを示すのでした。

「いいでしょ、向井さん、なんなら、ここの切り盛り、してほしいなぁ」
「ええっ、わたしが、ですか、考えて、みますけどぉ」
康夫に言われて、美佐子は、うれしいような、不安なような、複雑な気分になっています。古書店といえばいいのか、シュールリアリズム系の書籍や絵画をあつめて、販売するという康夫の考えに、紗枝子には商売としてどうなのかという判断はできかねます。といっても、アルバイト店員としても扱うモノが、芸大出身者として理に適っているようにも思えて、うれしいことでした。
「食事、一緒にしよう、三条の同時代の、ほら、あの洋風居酒屋で」
「ええ、いいですけど、わたしは、いいですけど」
美佐子は、二度、いいです、と繰り返して、康夫の申し出を受けているのです。
「ぼくの、理想が、実現する、向井さんのおかげだ」
「いいえ、そんなこと、おっしゃらないでください」
「ほんとうだよ、向井さんがいなかったら、実現しないんだ」
このまえ、まだ一度だけですが、からだを交わらせた関係の由岐康夫に、美佐子は救いの神のすがたを見ているようでした。

2-3-

若い身体は食欲旺盛、性欲旺盛、生きる力の源を、きっちりと支えることで生命力があふれてくると、康夫は考えます。男としての女性、性対象としての女性は、美佐子だけではない康夫です。康夫の身の上だから、利口な女は、自分の生き方にあわすように、康夫を伴侶として求めてきます。康夫にしても、求められれば応じるたちだけど、それぞれに生涯をともにする相手としては、満足できなかったのです。
「うううん、だから、向井さんが、いいと言ってくれれば、それで決めます」
「わたしは、いいと思います」
「それじゃ、決めた、さっきの場所で、本屋を開く、そう決めた」
「ああん、わたし、もう、飲めませんわ」
ワインを注いでくる康夫に、グラスに手をかぶせて、もういらないとする美佐子です。このあたりで二人だけになれる処といえば、と康夫が思う。そろそろおわかれしなくっちゃ、と美佐子が思う。
「まだ、時間、あるんだろ、向井さん」
「ええ、でも、もう、きょうは、おわかれしようかと」
康夫の顔つきを見ていると、その物憂げな表情が、アルコールのせいなのか、美佐子には優しくしてあげたいと思う感情がわいてきたのです。
「ええ、少しだけなら、だいじょうぶ、ですけど」
寺町通りを御池まであがりそのまま東に歩くと河原町の御池。河原町を下がって教会の角を東に曲がって、もう薄暗い空が見える目の前が、二人だけになれる場所。25才と28才の女と男です。なんの不思議もないまま、羨望の目線で見られたとしても、それは悪いことではないことです。

「だめですよぉ、ああ、ちょっと、ふらつきますけどぉ」
肩に手をおかれ、抱かれようとして、美佐子はふっとわれにかえります。
<安売りしてはいけない、もっと、もっと、高く売らなくっちゃ>
ふっと美佐子の脳裏によぎる商売上の売り言葉。康夫は康夫で
<美佐子の身体、もらえるだけ、もらうぞ>
別の女のことを思い浮かべることはないけれど、関係を結ぶ女への、男の欲望に、美佐子を征服する気持ちです。
「うううん、いい匂いだよ、美佐子さん・・・・」
「いやですよぉ、由岐さま、ああ、ああっ」
抱かれて、抱き締められて、頬と頬をすりあわせるようにしてくる康夫に、美佐子は心をふるわせます。ふうううっと力が抜けていくような気持ち。目を閉じ、成り行きに任せている美佐子。抱かれる、無心です。怖さもなく、積極的に求めるでもなく、でも、心の中は平穏です。
「ううっ、はぁああっ、はぁああっ、はぁああっ」
唇を重ね合い、舌を少しだけ絡ませられて、ブラウスの上から胸を触られる感触に、美佐子が反応します。由岐は無言です。男が手を伸ばして、美佐子をブラウスのうえから愛撫します。スカートのうえから腰をなぶります。ブラウスのボタンを外され、スカートのホックを外され、それぞれに脱がされてしまって、インナー姿になった美佐子。それにあわせて康夫がシャツとブリーフの姿になります。

2-4-

二度目の交わりだから、美佐子のきもちは意外と穏やかです。その気になると、そのことを受け入れて、欲求を解消したい欲望があるようです。
「好きになってしまったみたい、向井さん・・・・」
「ええ、私も、なんだか、由岐さんのこと・・・・」
インナー姿になった康夫と美佐子が抱きあいます。そうしてそのままベッドの縁へ美佐子が座ります。康夫は立ったままです。向き合っています。
「はぁああ、私、由岐さん、私・・・・」
美佐子が、立ったままの康夫の腰へ、顔をつけます。ぷっくらふくらんだ康夫のブリーフ、そのふくらみへ顔をつけ、両手を自分の顔の横へあてがいます。
「ふぅうう、ふぅうう、すぅうう。、すぅうう」
美佐子の息する音が、鼻から、口から、洩れでてきます。あたまがぼ〜っとしてしまった美佐子、康夫の硬さを意識します。
「ああ、ああ、ああっ」
「ふぅうう、すぅううう」
康夫がブリーフを降ろします。太ももの根元まで降ろすと、男のモノが跳ね上がって起ちます。勃起した男のモノを、康夫のモノは、初めて見ます。この前は見る余裕もなかったのです。

ブラジャーを付けたまま、ショーツを穿いたまま、ベッドの縁にお尻をおいて、康夫のモノを口にいれます。経験あり、といえば経験がある美佐子。何年前になるのか、大学二回生のときの経験がよみがえってきます。
「ううっ、ふうううっ」
「おお、向井さん、いいねぇ、いいよぉ」
思った以上に積極的に振る舞ってきた美佐子を、康夫はうれしくもあったけれど、慣れている美佐子への畏怖の気持ちもわいてきたのです。経験済みだということは、このまえのことでわかっていたが、その詳細にまで知る由はありませんでした。お互いに、経験済みですが、そのことを話題にするのはご法度です。
「はぁああ、ああ、あああん」
口に頬ばっている康夫のモノを口から離し、右手に握って、上下にこすっていきます。康夫が、立ったまま上から手を降ろしてきて、美佐子の胸を触ります。ブラジャーのホックをはずして、乳房を露出させます。ぷっくらふくらんだ美佐子の乳房、25歳の乳房は、ツンと乳首が起っていて、乳房じたいが円錐形です。
「はぁああ、ああっ、ううっ、ふぅううう」
乳房をまさぐられながら、康夫のモノの頭部分を唇に挟んで、揉みほぐします。そうして挟んだそのまま、口の空洞へと挿し入れ込むのです。

2-5-

美佐子が康夫のモノを口で刺激させたあとは、美佐子が康夫にされるばんです。ブラもショーツもつけたままでベッドの縁に座っている美佐子の前に、康夫が座り込みます。美佐子の腰を前へ持ってこさせ、ショーツを脱がせます。
「はぁああ、由岐さん、ああっ・・・・」
柔らかい息とともに洩らす声がくぐもって聞こえます。女の吐息、康夫にはこころよい刺激です。ショーツを脱いだ美佐子の膝から太もも、太ももと太ももの間、閉じられた間のうえには黒いちじれ毛です。刺激です。康夫は、その毛へ右手をだして触ります。左手で膝をひろげさせると美佐子の谷間が、見えてきます。
「向井さん、ああ、美佐子さん、美佐ちゃんがいいか、美佐か」
康夫も声がうわずっているのが、美佐子にはつかめて、なんと呼ばれてもかまわないけど、とおもいながら、羞恥の気持ちに胸が締め付けられます。男の人の目に、自分の秘蜜の処を見せる、固まってしまうからだを、康夫がひらいてくるので、それに抵抗なくしたがっていく美佐子です。
「はぁあ、ああ、由岐さぁん・・・・」
ベッドの縁にお尻の半分を置いて膝をひろげ、康夫の頭を抱く美佐子。康夫の顔が、自分の股間へ着けられて、秘蜜の箇所を唇で撫であげられ、舌で秘唇の谷間をなめられていく歓びのような恥ずかしさ。マンションのフロアーで古書店を開きたいという由岐康夫に従っていこうと思う美佐子です。

ベッドの上で、全裸になった美佐子が仰向き、その左横に全裸の康夫がうつむきかげんで寝ています。半分は美佐子にかぶさり、右腕が美佐子の首後ろ、左腕から手が美佐子をまさぐります。美佐子はその康夫にあわせるようにして、左手で康夫の腰の勃起ブツを握っていきます。左手は、首後ろからの康夫の手に、手を絡ませています。
「はぁああ、由岐さん、はぁああ・・・・」
「いいんだね、美佐子、いいんだね」
「はぁああ、いい、いいけど・・・・」
「つけるから、だいじょうぶ」
「はぁああ、つけて、してね」
甘ったるい、小さい、幸せな声。康夫が乳房を触ってきて、その手を腹から股間へと下ろしていくとき、美佐子は乳首を唇にはさまれ、揉まれるのでした。愛の交情、情の交換、男と女がひとつになっていくときの情緒が、ベッドのうえに醸されてきます。
「はぁあああ、由岐さん、ああっ、ああっ」
まさぐられ、指をそれとなく挿しいれられる美佐子です。握る康夫の腰のモノが、大きくなって濡れていきます。康夫がにじみ出させる露を、美佐子が皮をかぶせて剥くことで、頭のところを濡らさせる。康夫が美佐子にかぶさって、ひらけてきます。美佐子が、そのしぐさに応えていきます。






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最新更新日 2016.5.29


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