えろすかろす日記

えろすかろす物語(2)-1-

 1〜7 2015.1.1〜2015.1.8

    

-1-

絵師の渋谷健介は四十半ばになって、女の絵を描きたいと思いました。二十代から日本画の技法で、風景画を多く描いてきた絵師ですが、三十代のころからは美人画を手がけることもありました。風景画の場合は、スケッチにでかけて、それを繋ぎあわせるようにして記憶を再生し、絵にしあげていきます。美人画、これはモデルを置いて、スケッチして、絵にしあげていくのです。ところが渋谷健介のそれは、スケッチだけではなくて写真に撮って、それを見ながら絵に仕上げる。親の渋谷藤吾まだ若かった昭和ころには、今どきのようなデジタルカメラなんぞはなかったから、ポラロイドカメラで撮っていたようでした。これは現像所とか他人の手を経ることなしに、画像が手元で作ることができからでした。渋谷健介が個展などで発表する美人画は、父渋谷藤吾からの受け継ぎで、和服を着た女の姿が多いのですが、洋装の若い女子をモデルにした絵も描いてきました。
「渋谷先生の絵は、清楚で美しい美人画、でもエロいですね」
健介が定期的に個展をひらく画廊のオーナー酒井直人の評ですが、エロティシズム、とくに女性の裸体を描くとき、性器をどう処理するかが、問題です。四十代になって健介は、表向きには美人画、裏向きには性器露出した作品を描いています。後者の作品は、非売品、作者蔵となって世には出していないのでした。渋谷健介は、いま、手元にあるパソコンを操作して、かっては秘密でしかなかった性器が露出された画像を、見ることができることに驚きと興味を持っています。この時代ですから裸婦モデルを依頼すれば、派遣されてきます。渋谷健介は、マジカルスタジオというモデル斡旋業者をネットで見つけ、そこへモデル派遣を電話で依頼します。電話でのやりとりの方が細部を伝えやすいからです。
「はだかにでも、なっていただけるモデルなら、うれしいが」
「ええ、お望みであれば、本人と相談していただければ、よろしいかと」
電話の向こうの相手は男子で温和な感じに思えた、きっと年配の男子だと健介は思うのでした。

派遣されてきたモデルは中島小枝子という名で、本名なのか仮名なのかはわからないが、いま、渋谷健介の目の前にいるのは、初々しいまだあどけなさが残る女子です。
「裸にでも、なってくれるんだよね」
「ええ、だから、先生のおっしゃるモデルに、なってあげる・・・・」
「どこまで?」
「どこまでというのは?」
「つまり、どこまで裸になっていただけるのか」
「どこまででも、いいですよ」
「どこまででもって、縛って晴雨先生のような姿でも、ってことか」
「せいうせんせいのような、って、どういうすがたなんですか」
小夜子は大学二年生、二十歳になったばかりだという学生です。最近の女子は、要求すればなんでも受け入れてくれる、という話を絵描仲間から聞いたことがあったから、健介は小夜子に、そのようなことを問うたのです。
「まあ、小夜子さんは、和服が似合そうだから、そう思ったわけだよ」
「和服のモデル、ですか、わたし、ひとりで着れませんけど」
「いいのさ、そんなの、適当で、いいんだよ」
乱れた女の姿を描きたい、それも羞恥の部分を露出させた女体を描きたい。描く前には写真を撮っておきたい。デジタル写真はパソコンにつなげば、他人に見られることもなく、プリントすることもできる。健介の頭の中は妄想に満ちています。

-2-

絵師渋谷健介のアトリエは、銀閣寺の近く、哲学の道から山の方へ、やまぎわにあります。法然院とか、観光の人が多く来られますが、アトリエへの訪問客は、ほとんどありません。健介の父、渋谷藤吾が昭和の時代に建築した和風の建物、アトリエは32畳の広さ、大きな透明ガラスの窓に面した向こうは山の斜面です。中島小夜子が訪問してきたのは、午後1時、かんたんな面談を終えて、さっそくモデルの仕事に入ります。依頼者の渋谷健介についての詳しい知識は、持ち合わせていませんが、画家さんだとは認識しています。小夜子は芸術大学造形学科の二年生です。モデルのアルバイトは、もらえる給金がいいから、友だちなどもこのバイトには積極的です。
「じゃあ、小夜子くん、ここに座ってみてよ」
小夜子は、もう直射日光が入らない窓辺を背にして、アンティークな籐で編まれた肘掛椅子に座るよう、言われます。小夜子の洋服は白いフレアスカートのワンピース。すそが膝下まであって、ソックスを穿いているから素肌は見えません。小夜子は、健介から言われるまま、肘掛椅子に座ります。
「かわいいじゃない、小夜子くん、ぼくの後輩、大学が一緒だよ」
健介が卒業したのは、もう十数年前の芸大です。その同じ芸大に通っている小夜子を見て、男の本心、自分のモノにしてしまいたい欲望が湧いてきます。
「それ、わたし、知ってます、先輩だってこと」
丸いクリクリの目をしたお人形さんのような小夜子が、肘掛椅子に座ったまま、応えます。
「それじゃ、写真を撮らせてもらうよ、いいね」
「はい、いいですよ」
小夜子は、肘掛椅子に座って、正面を見て、手は膝に置いて、こころもちニッコリ笑顔で、健介が手にしたカメラを見ています。

32畳のアトリエは、洋風の仕立てです。渋谷健介が描いた日本画作品が壁面に立てかけてあります。畳一枚分の広さのテーブルは、作業台です。絵の具の棚が作業台の横壁面に作られていて、絵の具が箱のまま積まれています。筆立てが作業台の上部に並べられていて、大きな刷毛から細い筆までが立てられています。
「なので、三日間契約だから、あさっての夜まで、モデル、よろしくね」
「先生とお呼びすればいいですか、先生」
「先生と呼ばれるのは、好きじゃないのよ、でも、まあ、いっか」
先生と呼ばれるのは面はゆい、悪いことができない、健介は、だからといって否定はしません。
「じゃあ、小夜ちゃん、小夜子、小夜子さん、どう呼ぶかなぁ」
「おさよ、お小夜、みんなそうゆうから、先生もおさよでいいですよ」
クリクリ目のお小夜、愛らしい口元、渋谷健介は四十半ば、お小夜は二十歳、親が子をみる視線とは全く違って、性交渉の対象です。
「じゃあ、斜め横から、撮らせてもらうよ」
渋谷健介が手に持っているのはデジタル一眼ミラーレスカメラですが、三脚には動画を撮るカメラがセットされています。お小夜のスケッチは、いずれ商品価値を持つものと考えるから、それもしたためますが、主には写真、それから映像、動画です。
「いいねぇ、お小夜、目線をカメラに向けて、そうそう、いいねぇ、かわいいっ!」
カシャ、カシャ、写真を撮られる小夜子は、シャッター音に興奮してしまう傾向があります。物語が好きな女の子。まるで悲劇のお姫さまになる感じで、うっとりしてしまうのです。

-3-

四十半ばの渋谷健介はバツイチ、十年近く連れ添って、別れてから早や十年です。男盛り三十代の後半、四十代の前半、性欲は旺盛ですから、一年にひとりの割合でセックスフレンドをつくってきました。日本画家としての知名度に、風景画にもエロス画にしても、女性のファンがいるものです。だから、いつもの手口、あなたの絵を描きたい、と口説いてセックスに至らしめる。男と女の関係とは、美しくもあるけれど醜いこともある関係です。そんな渋谷健介に、今回はモデル斡旋からの派遣で、口説き方で、いかにでもなるという女子を導き入れたのです。その女子の名が小夜子、二十歳、芸大二年生の学生、クリクリ目で小柄な妖精、健介はスケッチよりも写真に撮っていくんです。
「もう少し、そうそう、顔をあげて、手は胸にあてて、そうそう、いいねぇ」
カシャ、カシャ、カメラのシャッターが32畳のアトリエに乾いた音を醸しています。
「はぁあ、ああ、先生、もう、わたし、ああ」
「どうした、お小夜、どうしたの」
「うううん、なんでもない、だいじょぶです」
写真に撮られる、シャッターの音で、気が昇華してきているのか、小夜子の表情が柔らかくなってきて、まるで観音さまのような表情です。健介のこころが揺さぶられます。
「少し、休憩だ、そのあとは、スケッチだ」
「はぁあ、先生、トイレ、貸してください」
上気した表情から我に返った小夜子が、恥ずかしそうに、トイレへ行きたいといいます。
「廊下の右だ、そうだね、言ってなかったね」
健介は、小夜子にトイレの場所を告げてから、その小夜子がお尻をめくる姿を想像してしまいます。

哲学の道では、まだ桜には早いけれども春だから、観光の人たちで賑わっています。渋谷健介のアトリエは外観は和風、およそ100坪の敷地のまわりは庭、母屋から奥に造られたアトリエは32畳の広さです。広いと言えば広いアトリエですが、これでも狭いと言えば狭い広さです。三方が壁面、向こう正面が大きなハメ殺しのガラス窓に引き違いのガラス戸があって、そこから庭にでることができます。
「それじゃ、お小夜くん、はじめよう、衣装は、浴衣がいいなぁ」
白っぽいフレアのワンピース姿でアトリエへやってきた小夜子に、渋谷雄介が用意した浴衣を着てもらって、スケッチするというのです。
「はい、着替えます、したは、どうすれば、いいですか先生」
「ないほうがいい、なにもないほうがいい、できれば」
「はい、なにも着けません、浴衣だけ、ああ、帯はこれですか」
白地の木綿に紅色と桃色の花が描かれた柄の浴衣、それに帯は兵児帯、搾りの赤と桃のモノです。
アトリエの一角に仕切った衝立のむこうで、小夜子が浴衣に着替えます。脱いで着るところを、見たい、写真に撮りたい、動画で撮りたい、雄介の欲望が昂じてきますが、いまはまだ、初めの最初だから、着替えて姿をあらわすのを待つだけです。
「靴下は、どうします、穿いたまま、それとも脱ぐぅ」
衝立の向こうから、小夜子の細い女の子声が聞こえてきて、渋谷雄介は、どぎまぎしながら、脱いで、と返します。そうして浴衣に着替えた中島小夜子が、いっそうクリクリ目を際立たせて、アトリエにあらわれたのです。

-4-

なにもつけないからだに、赤っぽい花柄の浴衣だけを纏った二十歳の小夜子が、健介の目の前に現われます。浴衣にあわせた色の兵児帯です。まるい肩、胸のふくらみ、素足の指先には赤いマニキュア、クリクリした目の可愛い女子に、四十半ばの絵師渋谷健介がこころを奪われてしまう瞬間です。
「おおおおっ、かわいいっ、いいねぇ、お小夜ぉ」
その驚きをからだごと表現する健介の仕草に、小夜子はにっこり笑い顔を見せます。
「じゃあ、いよいよ、スケッチしていくから、ここにお座り」
あらためて籐で編まれた肘掛椅子に座るように申し付ける健介。手にはスケッチブックと鉛筆を持ちます。
「ラフでいいよ、でも、なるだけ肌を露出して、ほしい、なぁ」
モーツアルトのピアノ曲が、耳を澄ませばわかるほどのボリュームで、バックグラウンドミュージックです。窓からの光は明るくて、暖房が利かされたアトリエは、小夜子が裸でからだを開けても、寒くなんてない温度です。
「そうだね、お小夜、膝小僧、出しておいてほしいなぁ」
「ああ、こうですか、こんなもんですか」
「ぴったしくっつけないで、流す感じで、そう、それくらい」
胸は閉じたままで見えません、浴衣に隠されていた膝が露出され、膝をずらしたから太腿のうちがわが、中ほどまで見える格好です。初々しい、はち切れそうな肌、餅肌、色白、いかにも若い女の子といった感じに、絵師渋谷健介は目をみはります。どきどき、こころが高鳴ってきているのがわかります。ぐっと生唾のみこんで、小夜子をじっと見つめます。

籐の肘掛椅子に座って膝を露出した小夜子の前に立ち、スケッチブックに鉛筆を走らせる渋谷健介は、四十半ばの中年男です。目の前に座る中島小夜子は芸大の二年生、二十歳です。裸体に赤い浴衣を着ただけの兵児帯姿で、浴衣のすそがひらかれて、膝を露出させてずらしているから、なまめかしい太腿もチラチラ、半分までが見えているんです。
「ああ、先生、うごいても、いいですか」
「いいよ、少しなら、動かせても、いいよ」
小夜子がお尻を心もちあげ、そのときずれている膝から太腿がもちあがります。正面に立っている健介の目に、小夜子の奥が一瞬だけど見えたのです。黒い茂みが、見えたのです。さりげなく、小夜子には何の意図もなく、座りなおすことだったのですが、すでに情欲を醸させている中年男には、胸を躍らせる出来事。このあとには、全裸にまでさせてしまって、交合にまでいたってしまうのですが、いまはまだ、様子眺めの状態です。
「左の膝を、座るところへ持ち上げてもらえないかなぁ、お小夜」
「ええっ、お膝を出したままで、ですかぁ」
「そうだね、できるかな、そんなポーズ」
「できますよ、先生、そうして、左のお膝を、ひろげるんでしょ」
ドギマギ、絵師の渋谷健介がいうまでもなく、小夜子の方から、淫らな挑発のポーズをとるというんです。
「ああ、お小夜、いいねぇ、そこまで、考えてくれてるんだ」
「好きなんでしょ、みんな、おじさんたち、こんな格好、見るん」
小夜子は、絵師渋谷健介が考える以上に、無意識に大胆なことをする女子だと悟って、どうしたものかと迷いも生じてきています。モラルに対してはアンチモラルだけど、相手がアンチだとモラリストになってしまうのです、中年のおじさん絵師渋谷健介。

-5-

アンティークな籐で編まれた肘掛椅子に、浴衣に兵児帯姿で座った芸大二年生の小夜子です。この小夜子が、双方の膝を丸出しにしたまま、左の足裏を座部にあげ、その膝を外側に倒してしまったのです。正面に立っている絵師の渋谷健介の目に、肌色とは違った濃いめの恥部、なにもつけていない小夜子の股間が丸見えになって、目に飛び込んできます。ハッと息をのむ四十半ばの健介。小夜子は、左の膝を肘掛におしつけ、その膝小僧を抱いてしまったのです。
「こんなポーズで、いいんですか、先生」
ドギマギする健介を見据えるように、小夜子は顔を前に向けて、言うのです。
「いい、お小夜、とってもいい、いいけど」
「いいけど、どうなのですか、先生、わたし・・・・」
「スケッチよりも、写真が撮りたくなっちゃった」
「撮ってもいいですよ、先生、お写真、撮っても!」
少し茶色に染めた黒い髪の毛、可愛い目、お人形のような顔つきの小夜子。白地に赤と桃色の花柄浴衣からは、太腿が露出し、股間までもが露出しているのです。この姿を、小夜子は、写真に撮ってもよい、と承諾したのです。健介には初対面の小夜子が、まるで妖精のようにも見えて、突然のことでこの世のできごととは思えないくらいに、目を疑ってしまいます。
「ええっ、写真を撮ってもいいのか、OKなのか、お小夜」
「はい、先生、わたし、先生の、どれいちゃんになっちゃうから、いいのよ」
小夜子に暗さはありません。膝をひらいて、太腿ひろげ、産毛のような陰毛が生える恥丘から、尻の穴までをひろげきっているのです。

モーツアルトのピアノ曲が流れる明るいアトリエの窓際に、小夜子が肘掛椅子に座っています。浴衣を着て兵児帯を締めた少女のような妖精が、足のかかとを座部にあげ、左右にひろげて座っています。兵児帯に巻かれた腰から浴衣がはだけて、足は太腿までが露出しています。
「ああん、先生、こんなポーズって、恥ずかしいですよね」
小夜子の性格はたぶん強いのだろうと、健介は思います。無理して中年の男を挑発してくる大胆さに、絵師の渋谷健介は、たじろいでしまいます。
「お小夜は、恥ずかしいと思ってる、そうだね」
「恥ずかしいけど、先生、好きなんでしょ、こんなの」
健介の手元にはデジタルカメラが持たれていて、液晶のモニターには目の前の小夜子の相似形が映し出されているんです。まだ縦割れが閉じられたままの小夜子の股間が、健介のこころを揺すります。下半身が疼いてきます。見ているだけで、シャッターを切るのが怖いくらいに、健介は動転しているのです。32畳のアトリエ空間、籐の肘掛椅子に開脚Mすがたになって座っている二十歳の小夜子。
「おっぱい、見たいんじゃないですか、先生」
妖精小夜子は渋谷健介を手玉にとるように、こころを揺すぶってきます。膝を立ててひろげたまま、胸もとをひろげだしてきます。肩からVの形の襟元を、小夜子は兵児帯の上部から横へとひろげて、盛り上がる乳房を、露出してしまったのです。
「お小夜、これは、どうしたことか、おおっ」
「先生、わたし、おっぱい、小さいでしょ、ぺちゃぱいでしょ」
確かにそれほど豊かではない双方のふくらみだけど、あめ色の乳輪から乳首は、たしかに女子のもの。色白な小夜子の、浴衣だけの姿。隠すべく処をひらいてしまった芸術大学二年生、二十歳になったばかりの小夜子です。

-6-

目の前に現われた妖精小夜子。絵師の渋谷健介には、願ってもできないような稀なる目の前の光景に、まるで錯覚、幻覚、幻視のようにも思えて、我を忘れてしまいそう。
「わたし、先生の、絵、見たのよ」
肘掛椅子に座った小夜子は、開脚でMの格好。正面に立った健介は、小夜子のなににも隠されていない股間に見とれながら、胸の膨らみもいっしょに見ていたのです。そこへ小夜子が、健介に声をかけてきたのです。
「先生の絵、縛り絵、画廊の人が、渋谷先生の絵だ、とおっしゃったのよ」
たしかに、渋谷健介は、可楽という名で縛り絵を描いています。小夜子が、そのことを切りだしてきて、健介は、なんだか後ろめたい気持ちに見舞われます。表向きの渋谷健介は芸術家です。絵を描く絵描としての芸術家として、世間には知られています。縛り絵は、その芸術家とは認めない世間の風評にあわせて、隠していて、屋号は可楽としているのです。画廊のオーナー、酒井直人が名づけてくれた可楽という名。写楽をもじったものですが、性器も描かれた縛り絵は、隠れた人気作品として海外へも持ち出されているところです。
「先生、わたし、先生のモデルになってあげてよ、縛り絵の・・・・」
赤っぽい浴衣に赤っぽい兵児帯をつけた妖精が、籐で編まれた肘掛椅子に性器をひろげて座っているんです。まるで親子ほどに歳の離れた小夜子と向き合った渋谷健介には、口説くまでもなく、モデルの方から志願されるとは、信じがたいけれど、真に受けてしまいます。
「そうなの、お小夜、知ってるんだ、ぼくの別名のこと」
これまでは画廊のオーナー酒井直人が手配して、モデルを雇って縛り絵を描いてきた渋谷健介です。その場には酒井が立ちあっていたから、自由発想というよりも売ることを前提とした作風で、それは浮世絵の春画に似せたものでした。

「ああん、先生、わたし、ああああん」
「いいんだろ、お小夜、こんな関係になっても」
「ああん、いいですけどぉ、あかちゃん、だめよ、先生」
「そうだね、だめだね、そとだしでないと、だめだね」
「ちゃうの、先生、いいのよ、なかでだしても、いいけどぉ」
「そうか、すきん、つけて、すれば、いいんだよね」
「あああん、だから、もう、つけて、ください、先生」
先走りの露が滲み出てきた健介に、小夜子が用意していたピンクのスキンが渡されて、挿入まえからつけさせられるんです。
「おおおっ、もっているのか、お小夜、準備いいねぇ」
四十半ばの渋谷健介、二十歳のころ程にはもよおさないのですが、やっぱり裸で挑発してきた小夜子を見て、勃起してしまったのです。肘掛椅子に座っていた小夜子は、仮眠用のベッドに寝そべっています。交合、本番、健介の勃起ブツにピンクのスキンがかぶせられ、狭いベッドのうえで絡みあうんです。浴衣を脱いだ小夜子は全裸です。ネックレスもイヤリングもつけていない正真正銘の素っ裸です。陰毛は薄い目ですが剃ったようすもなくて、股間にも産毛のように生えている小夜子です。
「ああっ、先生、はぁああ、ああっ」
正常位、小夜子にかぶさった健介が、ぶすっと勃起ブツを挿しこみだすと、妖精小夜子が、か細い声を洩らしてきます。仰向いた小夜子が拡げた手は顔の横、拡げた太腿、立てた膝、その真ん中へおおいかぶさる絵師の渋谷健介、隠し名を可楽と名乗る芸術家です。

-7-

芸大の二年生、日本画を専攻する二十歳の小夜子。彼女がどれだけの男経験をしてきたのか、絵師渋谷健介には知る由もありませんが、抱いている小夜子の裸体は柔らかい。白い肌の小柄な小夜子は、しなやかな裸体をくねらせ、ため息のような声をもらして、健介の腕の中です。きっちり挿しこんだままの男根にはスキンがかぶせてあるとはいえ、締めつけてくる小夜子の膣に、快感がこみ上げてきます。
「おおおおっ、お小夜、おおっ、おおおっ」
仮眠用の狭いシングルベッドの上、小夜子が仰向き立膝に太腿をひろげたところへおおいさぶさり、ぐいぐい、ぶすぶす、腰を動かす絵師渋谷健介。初々しい、まるで少女のような妖精、二十歳の小夜子に溺れてしまう絵師渋谷健介。
「はぁああ、ああっ、先生、ああ、ああ、ああっ」
「いいのか、お小夜、きもち、いいのか」
「ああん、ひぃいい、いい、いいっ」
小夜子のからだが、こわばり、ふくらみ、すぼんでいきます。しかめる顔は喜悦の証です。小夜子が、抱いた腕のなかで裸体をくねらせます。健介は、奥へ挿しこみ、ぐいぐい挿しこみ、捏ねて、擦って、果てだしていきます。下腹の奥の方が疼いてきます。
「おおおっ、お小夜、おおおっ」
ぐいっと挿しこんだ男根が、痙攣しだして、健介がからだをひろげます。ぴしゅんぴしゅん、射精の衝撃、小夜子の声が高くなり、喜悦の色を帯びだして、オーガズムに満たされて、そのまま絵師渋谷健介の腕の中で、勃起ブツを挿しこまれたまま、ぐったりと女体をひろげてしまったのです。

交合が終わって、小夜子は浴衣ではなくパンティを穿いてしまって、まだ乳房を露出させたままです。ぐったりしていたのに、数分も経ってないのにもう元気いっぱいという感じで、ピンクが混じった白いパンティだけの姿です。
「ううん、先生、わたし、いい子でしょ、好きになってくれますぅ」
「そうだね、お小夜、好きになってしまうねぇ、いい子だ」
簡易ベッドから立ち上がった小夜子が、スキンの処理を終えたばかりの、四十半ばの健介を、挑発してきます。
「わたし、もっともっと、可愛がってもらおかなぁ」
無邪気そうに言う小夜子。やり終えたばかりの健介は、若い小夜子の感触を、忘れないようにと思いながらも、言葉を紡ぎだしていきます。
「うんうん、可愛がってあげるよ、お小夜が、望むように、さぁ」
健介も小夜子の言葉に答えていきます。ストレートに言葉をかけていくほうが、小夜子は嬉しいみたい。健介の欲望は中年男の欲望です。ただ性急に交合だけするというのではなくて、ねちねちと、柔い裸体の隅々まで、手指と唇と男根で、弄ってやりたい欲望です。
「ほんと、ですかぁ、わたし、多情よ、いいんですか、先生ぇ」
「いいとも、お小夜、好きなだけ、してあげるよ」
「ほんと、でも、先生、やりすぎたら、死んじゃうよ」
「いやぁ、死んじまうとは、激しいねぇ」
妖精とは、男心をどこまでも擽るものだと、考えたこともある絵師の渋谷健介。目の前に現われた中島小夜子は、天から舞い降りてきた妖精、天女だと、思えてきます。まだ一日目の夜です。小夜子との約束は三日間、アトリエで二泊する予定で、絵のモデルなのです。





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最新更新日 2015.1.7


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