えろす物語
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 1〜8 2021.12.4〜2021.12.11

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これは物語、フィクションです。生きている証として、エロスについて思うことを記述していこうと思います。登場人物、名前は良一と幸子、時代は昭和の半ば、良一(21)と幸子(20)は愛しあう中です。愛しあうというのは、男と女、身体を結びつけることを伴って、快感を得あう、快感を共有しあう、ふたつの身体をひとつにつなぐ、そう、伊弉諾と伊弉冉が最初におこなった行為のことです。動物には雌雄、メスオスがあって、これが結合することで子孫を残す、動物の本能だと思います。良一と幸子は、この本能にもとづいて行為するわけですが、本来の目的、子孫を残す、ということに反して、子孫を残さないようにして、行為するのです。行為するということを具体的に書けば、こういうこと、男のモノと女のモノを、刀と鞘の関係、挿し込み、挿し込まれるのです。挿し込んだモノの処から脳に、挿し込まれた処から脳に、伝わって、それが快感、究極の快感となるのです。ええ、難しく書いているのは、気恥ずかしいからです。そのものずばり、そのことを描写していく、というのはここでは気恥ずかしのです。でも、そうは言っても面白くないので、面白くするために、具体的に書いていこうと思います。

良一は大学生、幸子も大学生、通う大学は違います。幸子は女子ばかりの大学、正真正銘の女子大生、高校が女子高でしたので、高校生の時から男子には触れあったことがありませんでした。世間では、初心な女子とみられる乙女、箱入り娘と言われています。その幸子が、大学生になって早々に、軟派されたのです。良一たちは三人、幸子たちも三人、河原町の喫茶店、四人席の通路を挟んで右と左に座っていて、男たちの一人が声を掛けてきた、というわけです。三人の男子に、三人の女子、それぞれがペアになって、喫茶店を出て、いきなりラブホテルへ、なんてことではなくて、鴨川の堤に並んで座って、手も握らずに、会話をかわしたのです。良一はお嬢さまそのままな感じの幸子に一目惚れ、幸子はまた法学部の学生良一に、男の理想をかさねて、一目惚れな感じでした。
「そうなの、幸子さん、アパートに一人で住んでいるんですか」
「ええ、そうよ、良一さんは下宿なのね、そうなのね」
住まっているところを教えあうというのは、近親感をいだくことができます。幸子には、憧れの男子大学生、ほんわりと抱かれてみたいイメージが霧のむこうに見えてきて、住所を教えます。もちろん良一も住まっているところを教えます。次に会う約束、良一の申し入れに幸子は素直に応じました。

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ひとつ年上、憧れの法学部男子向井良一と、会う約束をした落合幸子は、胸ドキドキ。初めての彼といってもいい、女子ばかりの大学の学生になって、きわめて近いところにやってきた良一と会うために、流行りのワンピースを着て、薄化粧して、河原町四条、高島屋のまえへいきます。約束の時間は午後3時、幸子がいくと良一がすでにきているのでした。
「うん、会えたね、よかった、ぼく、うれしいよ」
会うなりそう言った良一に、幸子は、共感をおぼえます。
「はい、わたしも、うれしいです」
高島屋の入り口ドアの前、平日の午後なのに、ご婦人方で混みあっています。幸子は、導かれるまま、交差点を渡り、木屋町に抜ける道にある古めかしい感じの喫茶店へ、連れ込まれたのです。
「モダンジャズの店なんだよ、この店、落合さん、初めてなの?」
まわりを見回している幸子の様子を見て、良一が訊きます。
「なまえ、きいたことあったけど、はじめて、です」
背凭れが高くて、二人掛けの長椅子、その前にテーブル、テーブルは前の席の背凭れの後ろになります。薄暗い全体、いきなり、もう、二人だけになる感じの空間です。奥に座った幸子は、なんだか狐につままれたような、へんな感覚になってきます。ソファーのようなクッションの座席に座ると膝のうえにテーブルです。クッションは低くて、膝から足首がこころもち斜めになります。薄暗い全体に、テーブルのすぐ上に傘が被った30ワット電球です。良一は男だから膝をひろげて、座っています。同伴喫茶です。奥に座った幸子から、見えるものといえば通路のむこうのテーブル席、でも薄暗くて、はっきり見えなくて、狭い個室に入ったみたいです。

良一は、容赦なく、軟派した女子との約束最初のデートで、初心な女子には異次元体験させるべく、同伴喫茶へ誘うのでした。三段跳びの要領で、デートしていくのですが、交わる最後のところまでいっちゃいます。ホップ、シート同伴喫茶、ステップ、ボックス同伴喫茶、ジャンプ、ラブホテル、という筋書きです。幸子は、初めてのこと、男の子の野望なんて知りません。優しいマスクの美男子、憧れの法学部の学生、向井良一に惚れこんでしまいます。
「はい、でも、わたし、うううん、はじめて、です、こんなところ」
横に並んで座っている良一が、幸子に触れる左の手を、手の平を、幸子の膝にのせてきます。幸子は、ドキッとして、もうすっかり赤面、こころが火照ってきています。膝に置かれた良一の手を、でも、ハネ除けたりはしません。なされるがまま、幸子は、ドキドキ、薄暗いシート、背凭れは頭をすっぽり隠して余りある高さ、薄暗いスポットになった光がテーブルの上を照らしています。
「もう二十歳になれば、大人だし、なんでも自由にできるんだよ」
「はい、ああ、わかります」
良一の手がうごめいてきます。ワンピースの布の上でうごめくので、シュミーズの綿が肌に触れてくるのがわかります。
「わたし、もう、大人だし、なんでも、なんでも、自由なの、そうなのよ」
「そうそう、自由なんだよ、自由恋愛、落合幸子、自由恋愛だね」
良一は、ひそひそ声で幸子に囁きながら、幸子の左肩に右手をさしのべ、幸子の上半身をねじらせたのです。
「うっ、ううっ」
いきなり接吻される幸子、もう、なにがなんだかわからないわけではなくて、キッスされてるぅ、意識の中で、幸子はうろたえます。

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同伴喫茶、店のルームそのものが、観光バス一台分ほどの空間、薄暗いから、二人掛けシートに二人が座って、抱きあっても、目立ちません。あちこちのシートに、男女の組が座っていて、男の背中が通路に向いています。幸子が座るシートも良一が通路に背中を向けていて、幸子に覆いかぶさる感じです。
「はい、ああ、はじめて、はい、はじめてです」
ほんとに小声で囁くように幸子が応えます。いきなり軽くですがキッスされた幸子は、唇を離され、こんなところへ来たことあるの、といわれて、答えたのです。ほんとに初めて、幸子、女子高を卒業して女子大に入学して、生真面目、オクテで、男子と交際することもなく、二十歳を迎えてしまって、内心、焦ってはいました。
「あっ、ううっ」
<だめ、こんなところで・・・・>
「ううっ」
前開きのワンピースを着てきた幸子が、良一に肩を抱かれ、胸の上に右手を置かれたのです。男に抱かれるのが初めてなのに、いきなり薄暗い喫茶店の座席でキッスされ、ワンピースのうえからとはいえ、胸に手をあてがわれてしまったのです。幸子、こころの中ではドキドキ、なされるがまま、良一の行為に従っています。大胆な男子学生良一、手慣れたモノとも言わんばかりの行動です。ウエストまで前ボタンのワンピースです。良一が、ボタンのひとつを外してきて、なかへ手がはいるようにと仕向けます。幸子は、もう頭で考えることが停止になって、唇を重ねていることさえ、意識から遠のいている感じです。良一は、幸子のぐあいをそっと確かめます。幸子が、わずかに震えているのがわかります。ボタンを外したワンピースのなかへ、右の手を入れていきます。絹の手触り、幸子がしたに着けているのは、柔らかい絹の下着です。
「うっ、ううっ、ふぅうう、、、っ」
くぐもった息を吐く音が、かすかに幸子のなかから洩れてきます。良一は、幸子が、手中に落ちた、と思います。

幸子は、初めて知る男の人の匂いに酔います。薄暗い店内、ボリュームがたっぷりのモダンジャズ、目の前のテーブルにおちる光のほか、まわりがあまり見えません。良一とデートするのは、まだ初めてなのに、いきなり同伴喫茶に誘われ、入ってきたところ、大人の世界だと思うのです。ワンピースの胸のところから男の手を入れられ、乳房にその手で触れられ、幸子は、ふるえて、うずってしまいます。キッスにしても、舌を絡ませるのではなく、唇をあわせて、唇で唇を刺激しあうだけです。
「どうした、さちこさん、うっとり、いいね、あたたかい、肌だね」
<ああん、いや、そんなの、手、ああ、つめたいわ>
幸子は、声には出せなくて、心のなかでのつぶやきです。
<あっ、だめ、そんなこと、だめ、だめ>
良一が、左の乳首をつまんできて、揉みだすのです。幸子のうろたえる、でもうっとりしてくる表情を逃しません。感じているんだ、と良一は安心します。従順な幸子は、ほんとうは胸にあてられ、先っちょをつままれ、揉まれているのを、やめさせる勇気がないのです。どうしたらいいのか、ああ、ピリッと感じてくるからだに、どうしたらいいのか、幸子は、戸惑っています。自慰することもある幸子です。でも、男の手、男の手は、全然ちがう感触、感覚、どうしたことか、二十歳の幸子です。
「いいね、さちこ、いいんやろ、感じるんやろ」
良一は、大胆に、でも腰から下へは手を伸ばしてきません。それよりも幸子の手を、自分の股間へもってこさせて、ズボンのうえかたかぶせさせるのです。
「はぁあ、ああっ、ええ、文学で、源氏物語、べんきょうしています」
「そうなの、源氏物語、ぼくは法律だ、民法、概論だけど、弁護士になりたい」
うわずった感覚で、良一に誘導される感じで言葉を交わしていく幸子。まだ、自己紹介もままならないまま、ここに来ているのです。

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ナンパされてお茶して、それから最初のデートで、幸子は同伴喫茶へ連れ込まれたのです。幸子は初めてのことですが、良一は手慣れたもので、ナンパした女子とのデート、最初にここ、同伴喫茶へと連れ込むのでした。目的は、セックスして遊ぶことなので、それに従う女子もいるし、それっきりになってしまう女子もいます。最後までいってしまって、それ以上のことを仕掛けてやると、それにも従ってくる女子と、そうでない女子がいます。
「ああっ、だめ、こんなところで、ああん、だめですぅ」
胸をひろげられ、乳房を揉まれだすと、幸子は、こころもち抵抗します。人の気配が感じられるから、気になるのです。良一は、これ見よがしに、人の気配があっても、知らぬ顔です。良一が、幸子の乳房をまさぐり弄ったあとは、自分のモノを幸子に触らせるのです。最初だから、触らせ、握らせるだけで、それ以上のところへはいきません。
「うん、握ったことあるんやろ、さちこ」
カマかけられて、幸子は、なんとも答えらえません。これまでに握ったことはありません。でも握ったことがないといえばバカにされそうだし、握ったことがあるといえば淫らな子だと思われそうだし、答えにつまってしまったのです。内心、ドキドキ、熱い肉棒、薄暗くてはっきりと見えないけれど、握っているのが、男の性器だと思うと、二十歳の女子大生幸子には、めまいがするほどのショックです。
<どないしょ、わたし、こんなの、硬いんや、あったかいんや>
女子として、うずうずと萌えてきて、お腹の奥が、ぐちゅっとなっているのがわかります。
「ねえ、さちこ、きょうは、ここまでや、ごはん、奢ってあげる」
同伴喫茶には、それでも二時間近く、いたことになります。喫茶店の外へ出ると、雑踏、ひとが行き交い、明るいお店が繁盛しています。

洋食のリプトンでハンバーグランチを食べて、別れたのが午後九時、さようなら、幸子は、奇妙な体験をしたあとで、奇妙な気持ちになっていて、良一のことを、もっと知りたいと思います。河原町四条からは市バスに乗って、住まいしている金閣寺近くのアパートに戻ってきます。
<うん、触られちゃった、でも、わたし、抵抗しなかった、それに、握っちゃった向井さんのん、硬かったけど柔らかかった、あったかかった、おっきかった>
幸子は、同伴喫茶での出来事を、思い出しています。噂には聞いていた同伴喫茶でしたけど、同伴されて行ったのは初めてです。なにかしら異様な雰囲気で、音楽が大きく鳴っていたし、ああ、壁が黒かったから暗く感じたのかも知れない。
<そうなんや、向井良一さん、国立大学の二年生法学部、カッコいい男子さん>
幸子は、まんざらでもなく、嬉しい気持ちになっています。恋人、そうです、恋して、愛が芽生えてなんて、いいじゃない、恋愛、いいよ、わたし、恋愛する、いい関係になってもいいなぁ、そうでしょ、女と男、それでワンセットだもん、次、会う、約束、来週の金曜日、また四条で会うのですね。幸子は、良一のことで、頭がいっぱいになります。次に会う約束をしてくれたから、また会える、そう思うと嬉しい気持ちになってきます。恋してる、男の人を好きになる感覚、幸子には、こんなに思うのは初めて、抱かれたい、おもいっきり抱いてもらたい、女の欲望がむくむくと湧いてきます。

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待ちに待った金曜日、夕方の五時、四条河原町の高島屋前へ行くと、良一はまだ来ていません。幸子が、少し待っていると、良一が、交差点の向こうから横断歩道を渡ってくるのが見えました。幸子は、なんだか嬉しくなってきて、おもわず右手をあげ、ここ、ここ、と合図するのでした。
「ええ、大丈夫です、わたし、待たされても平気ですから」
良一の顔をみると、幸子は、嬉しくてたまらないという表情になります。良一も、にっこり、幸子に笑みを贈ります。ナンパされてデートして、同伴喫茶へ連れていってもらって、軽くスキンシップしあって、別れてから一週間です。
「どうする、さちこ、喫茶店へいくか、まず、ごはんはそのあと」
「うん、喫茶店いこ、それから、わたし、九時までよ」
いまの時間は五時過ぎです。高島屋前の信号を渡って、三条の方へ歩いて、木屋町に抜け、高瀬川沿いにある喫茶店へ、良一が誘います。五段ほどの階段があり、ドアを押すとそこは喫茶ルームです。とはいっても、ここ、ドアから奥へ、右側が客席というかボックスになっている個室作りなのです。ボーイに案内されて、奥から三つ目のボックスに案内され、コーヒーを注文します。開口部からみて幸子が、座席の奥、良一が、その手前です。開口部にカーテンはないものの、覗きこまれない限り、人目にふれることはありません。
「どうしたの、さちこ、二人だけになれる、といってもいい店なんだ」
「りょういちさんは、こんなところへ、よくくるんですか」
幸子の問いかけに、良一は答えなくて、ぐっと腰を腰にくっつけます。まるで密着させる感じで、距離ゼロです。長方形のテーブル、その奥、壁ぎわに小さなスタンドがあって、豆電球の電気の明かりだけです。良一の顔がハッキリと見えません。薄暗いボックスのなかです。二人が並んで座って、膝からテーブルの前ヘリまで15pほどです。余裕といえば余裕です。

なにができる空間かといえば、男と女が抱きあえるボックス空間です。このボックスにはいる客は、男と女の二人連れ、向きあって抱きあうには、それなりに窮屈ですが、それがまた密着感があって、恋人たちには嬉しい、ハッピーな気持ちにさせるのです。
「ええ、ああ、はい、うっ、ううっ」
幸子が身に着けているのは、内側からいうと、パンティ、ブラジャー、スリップ、ワンピース、生足にソックス、それに靴。良一が、左手を幸子の右太腿のうえにおいています。右手をだし、幸子の左手をださせ、手の指を絡ませるのです。幸子は斜め、良一のほうに身体を向け、顔を横に向け、キッスを待ちます。
「いいね、さちこ、かわいいね、とっても、いいよ」
囁く良一の声に、幸子はうっとり、薄暗いから、良一には、ハッキリと表情がわかりません。顔を近づけると、幸子の甘い香りがしてきます。唇がつけられます、幸子は、顔のちからを抜き、薄く唇をあけています。
「う、ふぅっ、ううっ、はぁああっ」
良一が舌を歯にあててきて、幸子が歯と歯に空間をつくると、そこへ舌先をいれこんできます。そうして良一が吸ってきます。幸子は、左手を良一に絡ませたまま、右手を良一の腰の前へ誘導されます。幸子は、腰まで前開けのワンピース、スカートはフレアー、膝が隠れる丈です。
「ううっ、ああっ、あん、ああん、ああっ」
キッスを解かれ、顔と顔を向きあわせる幸子。良一が、左腕を幸子の肩にまわしてきて、絡めていた右手を離させ、ぎゅっと横抱きにします。乱れだす幸子。ワンピースの胸ボタンを二つ外され、右手を入れられ、スリップをたくしあげられ、ブラの上からまさぐられます。そうしてブラジャーのホックが外され、乳房が弄られてしまいます。幸子は、他人に見られてはいないかと、心配で、恥ずかしさでいっぱいです。

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同伴喫茶のボックスは、幸子と良一の二人だけです。テーブル隅のスタンドが、うすぼんやりと光を落しているだけです。幸子は、胸に手を入れられ、ブラを外され、乳房に手をあてられてしまいます。抱かれている良一の呼吸が、深くて、荒くなっていて、息する音が幸子の耳元です。
<ああっ、だめ、あかん、だめよ、ああん>
幸子は、良一のこころもち冷たさを感じる手のぬくもりに、からだの奥がじ〜んとしてきます。キッスしてくる良一に、幸子は抗いません。舌を絡ませられると、もう、じ〜んと感じだしてきて、どうしようもありません。乳房からはずされた良一の手は、自分が穿いているズボンのファスナーを降ろして、幸子の右手をそのなかへと誘導させます。幸子は、びっくり、布にかぶった男のモノに手の平を置く格好になります。
<ううっ、ああっ、りょういちさん、ああ、あったかい、いいっ>
幸子は夢の中、ジャズの音響、薄暗いボックスのなか、抱かれているのに、胸を触られたのに、うっとり、男のモノ、ブリーフのうえから、その感触が、心を揺すります。
「ううっ、うっ、うっ」
キッスされたまま、良一の右手が、ワンピースのスカート裾から、さいしょは膝が包まれ、太腿のうちがわへ入れられ、そのまま根元の方へとさすりあげられてきます。幸子、良一がブリーフの前の合わせ目から、男のモノが露出させていて、それを握っている右手を意識します。
<ああ、あったかい、かたい、うううん、やわらかい、おとこの、ああっ>
もぞもぞと太腿のつけ根にまで、さすりあげられた良一の手の平に、合わせていた膝を少しばかりひろげてしまう幸子です。フレアのワンピースのスカートが、太腿のなかほどまでめくれています。生足の幸子の太腿、その根元へ、良一の手が這いあがってきています。
「ああ、ああん、いやん、ああっ」
ドキッとする感覚、キッスを解かれている幸子が、小さな声を洩らします。良一のモノを握っている感触に酔います。太腿まで這いあがった手が、パンティの股布を退かして、股間の秘部に触れてきたのが、わかります。同伴喫茶のボックスのなか、良一の手が幸子の秘部へ、幸子の手が良一のモノを、着衣のままで、其処だけ、まさぐりあうところまで、きたのです。

抱きあって、まさぐりあって、手が離され、抱いている手が解かれて、シートに座りなおした良一と幸子。なにかバツがわるそうな気がする良一が、ぼそぼそと幸子に話しかけます。秘部がしっとり濡れてしまった幸子は、恥ずかしい気持ちです。顔を伏せ、テーブルを見ている幸子。良一は、幸子の耳たぶにかかる黒髪を、たくしあげ耳たぶをあらわにし、頬から首筋を、興味深く観察しています。
「ねぇ、さちこ、どうしよう、ごはん、いこうか」
「うん、はい、ごはん、たべたい、おなか、すいた」
幸子は、胸のボタンを掛け、良一はズボンのファスナーを上げ、なんだかんだで二時間を過ごしてしまったボックスから出て、木屋町の通りを四条の方へと歩きます。午後七時を過ぎていて、四条の角にある不二家のレストラン、二階へと上がったのです。明るい店内、眩い光、いらっしゃいませ、ウエイトレス嬢の声に、幸子は、この子、アルバイトしてるんや、と思います。
「洋食やから、オレ、エビフライ、食べたいわ」
「わたしも、それでいい、エビフライ、それ食べよ」
冷水が入ったコップが置かれた白いテーブル、エビフライランチを注文し、良一と向きあった幸子。良一と目線をあわせられなくて、うつむきかげんです。
「なんか、やっちゃったね、おれ、ちょっと、恥ずかしいなぁ」
目の前の幸子は、白っぽいワンピースに身を包んだカワイイ女子大生。良一は、その白い肌の首筋をながめて、幸子の裸体を思い浮かべます。幸子は、初めての体験、自分の恥ずかしい処を、触られてしまって、乳房と股間、やっぱり恥ずかしい、このまま逃げ出したい。エビフライの皿が運ばれてきて、お皿に盛られた白ごはんには、赤っぽい福神漬けが添えられています。
「また、会おうよ、来週、金曜日、やっぱり五時やね、四条小橋だよ」
「はい、また、お会いしたいです、来週、金曜日、五時、この橋のところで」
まだまだ人が行き交う四条小橋、幸子は、良一に親近感を抱いているのです。

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金曜日の午後五時、幸子は四条小橋へきました。目の前を若いひと、高齢のひと、行き交う人たち。まだ良一は来ていません。五時にはまだ少し時間があります。
<なんだろ、来るんかなぁ、良一さん、会いたいわぁ>
良一が五分遅れて、幸子の前に現れました。
「ごめんな、待った?、ごめん、ごめん」
良一が、幸子を見回し、謝っています。幸子は、安心感、良一が来たことに、安堵です。良一は、女子を待たせるテクニックを使って、幸子の心を揺さぶるのです。小橋から珈琲亭という喫茶店が見えて、まず幸子は、そこへ導かれます。同伴喫茶ではなくて、純喫茶、高瀬川に添った壁面は窓です。良一はコーヒーを頼み、幸子はミルク紅茶を頼みます。良一が、見つめているので、幸子は、視線をあわせられなくて、うつむいたままです。良一が、学校生活のことを訊いてきます。幸子は、友だちのこと、専攻している勉強のこと、脈絡もなく、ぽつぽつと喋ります。良一が、相槌をうち、うんうん、というように顔を小さく動かしています。こころの中は、ラブホテルへ連れていくこと、このことです。幸子は、このまえとそのまえ、怪しげな喫茶店に連れ入れられて、ボディタッチされてしまって、このまえには、生身の感じる処を弄られて、ちょっと気恥ずかしい気持ちで、良一の前に座っているのです。男と女ですから、なにがあるのか、幸子は、処女です。もう二十歳になったのだから、経験してもいいなぁ。友だちが、経験を話してくれて、幸子は、焼き餅を焼く感じで、想像しているのです。
「いいんやろ、ええとこ、いこ、ここでて、そこいって、それから、ごはん」
「ええっ、ええとこって、はい、いきます」
四条小橋から高瀬川にそって西側に葵ホテルがあります。良一は、そこへ幸子を連れていく、その魂胆です。幸子は、ちらっとそのことを想定していたけれど、なりゆきで、そうなったら、それでいい、と思っていたところです。

葵ホテルの入口は観葉植物の茂みになっていて、良一が一歩先、幸子を促します。幸子は、うつむいたまま、ためらいますが、良一にしたがって、開かれたドアからなかへ入ります。受付があり、部屋の鍵を良一が受け取り、106号室へ、幸子は、おそるおそるの気持ちです。なんだかからだが宙に浮くかんじがしている幸子。それに顔が火照ってきて、卒倒しそうな気分です。
<来てるんや、ラブホテル、ここ、ラブホテルなんや>
良一が幸子を誘導します。部屋へはいり、ドアの内側から錠をかけ、密室にしてしまいます。そんなに広くはありません。大きなベッド、それに1mほどの空間、洗面、シャワーとお風呂が少し大きめ、扉の向こうです。
「あっ、うううん、はい、ああっ」
良一が、立ちすくんでいる幸子の手を握ってきます。ワンピースではなくて、赤いセーターに白い膝上スカート姿の幸子です。
「いいんやろ、さちこ、はじめてやろ、こんなこと」
「はぁああ、わたし、どないしょ、こんなとこきてしまって」
密室です。大きなベッドの横に立ったまま、良一が幸子を抱いてきます。着衣のまま、キッスを良一が求めてきて、幸子、されるがままです。
「ううっ、ふぅううっ、・・・・」
大胆に、良一が、キッスしたまま、セーターの裾をめくりあげてきます。したには腰までの純白のスリップ。良一はそれもたくしあげてきて、ブラジャーが露出されてしまいます。赤いセーターと白いスリップを、良一が脱がしてしまうのです。キッスを解き、裾から持ちあげ、首をとおして、脱がせてしまうと、幸子の上半身は、白いブラジャーをつけた裸です。白い肌、ぽっちゃりの白い肩が、部屋の明かりのもと、くっきりと浮かびあがります。恥ずかしい、幸子は、目を閉じ、目を開け、良一がセーターを脱ぐのを見ています。ランニングシャツを着た良一です。先にズボンを脱いでしまう良一。
「スカート、ぬげよ、じぶんで、さあ」
幸子は、スカートを脱ぎます。白い二十歳のからだには、パンティとブラジャーだけがついている半裸です。良一は、幸子を、鑑賞します。下着姿を見回して、幸子の恥じらうところを、観察、鑑賞するのです。

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ブラジャーもとられた幸子は、パンティだけです。良一が見ていると思うと、恥ずかしくって、たまりません。なによりも初体験するのです。こわい気持ちもあります。こわくない気持ちもあります。最初の男の人が、一年年上、法学部学生の向井良一です。葵ホテルの106号室です。ダブルのベッドは毛布がめくられていて、白いシーツです。ベッド横のカーテンを良一が開いてしまいます。一面の横長の鏡には、寝そべった幸子の背中が映っています。良一は、幸子を上向かせ、パンティを脱がしにかかります。腰のパンティに手をいれ、そのまま下ろしてやります。幸子は、手を顔のうえ、目を覆い、でも、抵抗はしません、なされるがままです。
「ふぅうう、すぅうう、ふぅううぅう」
幸子は、なされるがままで、かぼそい呼吸する音を洩らしています。哀しみの呼吸なのか、歓びの呼吸なのか、幸子は、いつか来るべきときが来ているのだと、思っているのです。パンティが足首から抜かれて、幸子は、正真正銘の全裸となります。良一も全裸です。幸子は、膝をひろげられ、膝をもちあげ、その間に良一が正座します。そのまま幸子の股へ、腰を近づけ、男のモノを、女の処へ、その先っちょをあてがっていきます。
「いい、いいね、いくよ、いいね」
ぶすっ、先っちょが幸子のなかへ埋められます。幸子は、からだをぎゅっと引き締めます。
<いたい、痛い>
「いたい!」
おもわず声をあげてしまう幸子。男の勃起したモノが、挿入された最初です。良一が、容赦なしに挿し込んできます。そうして、痛みに耐える幸子のうえへ、上半身をかぶせます。首に腕を巻かれる幸子。幸子は良一の背中へ腕をまわして、のぞけります。

幸子、良一にからだを預け、無防備のまま、良一を受けいれていきます。最初だからというので、良一は、ゆっくり自分のモノを挿し込んだまま、抜こうとはしないで、仰向きになった幸子をの上半身を抱きしめるのです。
「ううっ、いたい、だめ、ああ、うう、ううっ」
幸子は、太腿をぐっとひらいて、呻きます。良一が、挿し込んだモノを、ゆっくりと引き抜いてきます。幸子には見えません、わかりません、快感ではありません、むしろ苦痛です。
「いたいの?、ゆっくり、入れていくから、我慢だよ」
「ううっ、うん、うん、いいのよ、わたし」
良一は、幸子のそこがギスギスしているのがわかります。スムーズに挿し抜きできるほど濡れてはいないのです。愛液を汲みだすまでには、まだ青すぎるのです。ゆっくりの抜き挿しだから、良一は快感の絶頂には至れません。でも、処女の幸子といま結んでいるのだと、思うと無理しないでおこうと思います。良一は、幸子にひろげさせたまま、自分のモノを引抜き、幸子の股間のすぐ前で、自慰する要領で自分をしごき、そのまま幸子の陰毛の上部へ、スペルマを放出するのでした。
「いいのよ、幸子、つぎ、また、しよう、そのうち、気持ちよくなるんだ」
「うん、わたし、ああ、良一さん、わたし、すきです、すきです」
全裸の幸子は、ナイスボディー、ふくよかな女子のからだです。良一は、ここで終え、洋服を着て、少し休憩してから、そのあと、食事する予定です。葵ホテルを出たあと、幸子が、お食事はいらないといい、四条小橋へ戻ったところで、もう、ここでお別れしたい、というのです。良一は、動揺している幸子の気持ちを察して、幸子のアパートまで、送っていくことにして、幸子も納得したところです。








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